研究課題
本研究では,造礁サンゴに共生する褐虫藻の存在割合を知るとともに,その手順化を図ることを目的としている。初年度である平成24年度には,単一の造礁サンゴ試料から2種類以上の褐虫藻の配列を検出できること,存在比が5%を超えるものが複数配列認められること,その一方で,非常に存在割合の低い褐虫藻配列が数10種類に上ることなどが明らかとなり,この方法の有用性が示されるとともに,適切な増幅箇所,試料調製法や解析方法などのさらなる検討が必要と思われた。そこで,すでに公共DBに登録されている100種を超える褐虫藻の配列を検討した。平成24年度の検出で設定した増幅箇所の塩基配列長が少し長めであったことから,5'側および3'側のそれぞれの認識タグのついたプライマー由来配列が完全に重複する範囲は限定されていた。このサイズでクレードの異なる褐虫藻を同時に増幅できる配列を検索したもののすべての配列で同一な場所は見当たらなかった。また試料間で均一な増幅をもたらす調製法についても検討した。次世代シーケンス分析に適用するPCRライブラリについて,一般的なアガロースゲル電気泳動法とデンシトメトリー分析を組み合わせた場合,取得された配列数にバラつきが認められたことから,キャピラリー電気泳動法による定量後を試みた。しかしながら,顕著な改善は認められなかったことから,取得配列数は適度にバラつくことを想定して設計する必要のあることが分かった。
3: やや遅れている
造礁サンゴから抽出したDNAについて,次世代シーケンサーの適用により複数の褐虫藻種由来の配列分析については,実現可能性の高いことが明らかとなった一方で,バリエーションに富んだ様々な褐虫藻の配列を同時に検出することは,その配列の多様性から困難であることが示された。また,一般的な手順化を目指す上で重要と思われる元の試料の調製法や濃度測定法の工夫が,十分な配列数の均一さを生まない状況にある。最終年度である平成26年度には,これらの問題に関する改善策を見出すことを目的とし,基礎的データの蓄積により手順化を図ることとする。
次世代シーケンサーの目覚ましい分析能力の向上は,短時間かつ低コスト膨大なDNA配列取得を実現することから,世界規模での造礁サンゴや共生する褐虫藻のDNA解析結果の比較へのニーズはますます高まるものと思われる。その一方で,褐虫藻の多様性の高さからすべての褐虫藻を同時に解析することは困難であると思われる。そこで,オーストラリアから日本に渡る太平洋の西側地域に生息する造礁サンゴに共生することが知られているクレードに絞り,解析法の確立と手順化を目指す。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Zoolog Sci.
巻: 31 ページ: 89-94
10.2108/zsj.31.89.