研究課題/領域番号 |
24651270
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
村田 浩一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00339285)
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研究分担者 |
泉谷 秀昌 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (30291123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 外来種 / グリーンアノール / サルモネラ / 沖縄島 |
研究概要 |
小笠原諸島に次いで外来種グリーンアノールの定着が確認された沖縄島において、前者と同様に高率なSalmonella保菌が認められるか否かを調べた。また、その保菌率が経年的変化を示しているかを理解するため、過去に採取され保存されていた試料を用いて分析した。さらに、ヒト生活環境との関連を評価するために、本種が保有する大腸菌の薬剤耐性を調べた。 2009年から2011年の間に沖縄島中部で捕獲され環境省那覇事務所で冷凍保存されていたグリーンアノールの死体を譲り受けた。死体を融解後、腸内容を採取しSalmonella検出の試料とした。現在まで検査に供した試料数は322で、その内訳は2009年に捕獲された個体の検体が177、2010年が39、2011年が106であった。前培養および増菌培養後にSalmonellaが検出されたのは7検体で、その全てが2009年に捕獲された個体であった。検査精度を高めるためにSalmonellaの侵入性因子関連遺伝子(invA)をターゲットにしたPCR法およびLAMP法も同時に行ったが、いずれの方法でも結果は同様であった。 沖縄島におけるグリーンアノールのSalmonella保菌率は2%で、小笠原諸島の保菌率(30%<)に比較すると極めて低率であった。さらに血清型別は、Salmonella WeltevredenとS. Enteridisが中心であり、小笠原諸島で大半を占めていたS. Oranienburgは検出されなかった。 大腸菌については、現在まで2010年の39検体および2011年の76検体を検査し、そのうち7検体から検出された。2010年に捕獲された1個体に、セファロチン(第一世代セフェム)耐性株の保菌が認められた。 2011年までの捕獲地を中心にグリーンアノールの生息環境調査を行った。いずれの場所においても視認されず生体捕獲は行えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖縄島で既に冷凍保存されているグリーンアノールからの試料採取については、これまで322試料の検査を終え、当初の計画以上に研究が進展している。島内の各種生物や環境からSalmonella分離用試料を採取については、実地調査で生息が視認できなかったため採取場所を特定できず行えなかった。 冷凍保存個体の腸内容を試料とした前培養および増菌培養によるSalmonella分離とPCR法およびLAMP法によるSalmonella遺伝子の増幅は問題なく実施されている。血清型別および遺伝子型別は行えているが、試料数が少ないため傾向を解析できるまでには至っていない。 グリーンアノールが保有するSalmonellaとヒト生活環境との関係を薬剤耐性の観点から評価するには本菌の分離率が低過ぎたため、新たに大腸菌を対象に加えて分離培養と薬剤耐性検査を実施し良好な結果を得ることができている。 小笠原諸島のグリーンアノールから分離されたサルモネラの血清型や遺伝子型との比較検討から、病原体運搬者としてだけではなく病原体増幅者としてのグリーンアノールの役割が新たに見出されている。
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今後の研究の推進方策 |
冷凍保存されたグリーンアノールからの試料採取および検査を進め、試料数に偏りがあるため達成の難しい年次があるが、各年次100試料以上の解析を行う。 島内の各種生物や環境からSalmonella分離用試料の採取を行い、沖縄島内における本菌の分布状況と外来種グリーンアノールにおける本菌保有との関係をより明らかにするための情報を蓄積する。 グリーンアノールと環境試料から、一定以上のSalmonellaが分離されたならば、血清型別および遺伝子型別(PFGE)により両者の関係性(インターフェイス)を分析する。さらに、ヒト生活環境との関係を明らかにするため、Salmonellaおよび大腸菌の両者で薬剤耐性菌の検索を進める。 研究結果をまとめ、外来生物に随伴する病原体を含めた総合的な外来種対策および事業計画へのフィードバックを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
沖縄島での調査を年末に行う予定であったが、気候等の諸事情により実行できなかった。このため、当該助成金を次年度当初の現地調査費に使用する計画である。
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