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2012 年度 実施状況報告書

東アフリカ牧畜社会における劣悪な国家ガヴァナンスへの民族誌的接近法の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 24651275
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関静岡県立大学

研究代表者

湖中 真哉  静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (30275101)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード東アフリカ / 牧畜社会 / ガヴァナンス / フロー / グローバリゼーション / 紛争 / 国内避難民 / 民族誌
研究概要

平成24年度は、ガヴァナンス、アフリカ国家論、東アフリカ牧畜社会の民族誌的研究について、広範な文献レビューを実施して、関連先行研究の再検討を実施した。
つぎに、東アフリカ牧畜社会において臨地調査研究を実施した(実施国については調査対象者保護のため非公開)。
平成24年度は、基礎的課題に取り組んだ。その内容は3点に分けられる。(1)東アフリカ国家周縁部における劣悪な国家ガヴァナンスの様態の解明、(2)劣悪な国家ガヴァナンス状況下での地域住民の日常生活モデルの構築。 (3)劣悪な国家ガヴァナンスに対して地域住民が採っている対応戦略の分析。
このうち、おもに(1)に関して臨地調査の成果により以下の3つの知見が得られた。
(a)ある東アフリカ牧畜社会における牧畜民の紛争は、稀少な牧草や水資源をめぐる争いとされてきたが、実際には、政治家が集票目的で数年前から周到に準備してきたものであり、劣悪な国家ガヴァナンスが紛争の主因であることが解明できた。(b)自然保護区の設置も紛争の一因とされてきたが、実際には、政治家がその内容を正しく伝えず、紛争を煽るのに利用されてしまった。(c)政治家は、家畜略奪の収益を多い時で40%も得ており、それによって、隣国から武器と弾薬を購入し、警察の特殊部隊すら買収していた。こうしたモノと金銭のフローの概要が解明できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の目的達成度は、おおむね順調に進展していると判断出来る。平成24年度は、(1)東アフリカ国家周縁部における劣悪な国家ガヴァナンスの様態の解明、(2)劣悪な国家ガヴァナンス状況下での地域住民の日常生活モデルの構築。 (3)劣悪な国家ガヴァナンスに対して地域住民が採っている対応戦略の分析という3つの基礎的課題に取り組んだ。
このうち、平成24年度の臨地調査によって(1)について多くの知見が得られたが、(2)と(3)については、敵対集団側からの調査では、国家による懲罰への懸念から情報を秘匿する情報提供者が多く、臨地調査による実態の解明がかなり困難であったため、不十分な点も残っている。ただし、劣悪なガヴァナンスに対して地域住民が採ってきたある種の自衛戦略については、既にかなりの情報が得られたため、大きな問題は生じていないと判断できる。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、東アフリカ牧畜社会を調査対象とし、人類学的な参与観察法に基づく臨地調査研究を実施する予定である。平成25年度は、平成24年度の臨地調査成果を踏まえて、(1)「フロー起点の民族誌的記述法」という挑戦的課題に取り組む。まず、フローの概念について理論的検討を行う。また、エージェント中心型の民族誌的記述法を参照し、方法論的検討を行う。つぎに、腐敗した国家権力のフローを解明して記述する。そして、密輸武器などインフォーマル経済におけるモノ のフローを解明して記述する。さらに、携帯電話の利用による脱領域的な情報交換のフローを民族誌的に記述する。
ただし、平成24年度の臨地調査成果から、敵対民族集団側からのアプローチが困難であることが判明し、臨地調査研究の難航が予想されるため、挑戦的課題 (2)「ガヴァナンスの重層性分析」は、平成26年度の課題とする。
平成26年度は、当初、平成25年度課題のうち残り一つの課題としていた(2)「ガヴァナンスの重層性分析」を実施する。まず、ガヴァナンスをグ ローバル/ナショナル/ローカルの3つの水準に整理して、その様態を民族誌的に特徴付ける作業を行う。つぎに、3つの水準の重層性を分析する。東アフリカ牧畜社会においては、国家ガヴァナンスが劣悪であるがゆえに、グローバル・ガヴァナンスやローカル・ガヴァナンスがその脆弱性を保管した り、代替したりしていると予想される。こうした様態を、政治学者による「社会の再伝統化」等の議論を参照しながら精緻化することを計画している。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の経費の使用計画は、平成24年度と同様、多くの割合を、東アフリカ牧畜社会を対象とした海外臨地調査の関連費用に使用する予定である(実施国については調査対象者保護のため公開できない)。海外出張旅費、海外調査に使用する四輪駆動車のレンタカー費用、調査協力者に対する謝金、調査携行品等の消耗物品が含まれる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 「アフリカ牧畜社会における携帯電話利用─ケニアの牧畜社会の事例─」2012

    • 著者名/発表者名
      湖中真哉
    • 雑誌名

      『国立民族学博物館調査報告』

      巻: 106 ページ: 207-226

    • 査読あり
  • [学会発表] 「携帯電話による平和構築─東アフリカ牧畜社会の事例─」2012

    • 著者名/発表者名
      湖中真哉
    • 学会等名
      日本アフリカ学会第 49 回学術大会報告
    • 発表場所
      国立民族学博物館
    • 年月日
      20120526-20120526
  • [図書] 「ポスト・グローバリゼーション期への人類学的射程─東アフリカ牧畜社会における紛争の事例─」三尾裕子・床呂郁哉 (編)『グローバリゼーションズ─人類学、歴史学、地域研究の現場から』2012

    • 著者名/発表者名
      湖中真哉
    • 総ページ数
      354頁 (257- 284)
    • 出版者
      弘文堂
  • [図書] 「遊牧民の生活と学校教育―ケニア中北部・サンブルの事例―」澤村信英・内海成治(編)『ケニアの教育と開発―アフリ カ教育研究のダイナミズム―』2012

    • 著者名/発表者名
      湖中真哉
    • 総ページ数
      288頁(36-58)
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] 紛争と平和をもたらすケータイ─東アフリカ牧畜社会の事例」羽渕一代・内藤直樹・岩佐光広(編)『メディアのフィールド ワーク─アフリカとケータイの未来』2012

    • 著者名/発表者名
      湖中真哉
    • 総ページ数
      203頁(136-150)
    • 出版者
      北樹出版

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公開日: 2014-07-24  

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