平成26年度は、海外臨地調査を継続すると同時に、これまでの海外臨地調査成果を中心とした研究成果を総括して、それまでに得られた成果を民族誌的アプローチとしてモデル化した。また、研究成果を口頭発表し、民族誌的研究を公刊した。 2014年8月に、東アフリカ牧畜社会を対象として、人類学的な参与観察法に基づく臨地調査研究を実施した(実施国、調査対象手段の名称については調査対象者保護のため非公開)。地域住民が自発的に構築している平和構築の仕組みは、さらに発展を遂げており、寄付によって、家畜の略奪に対する倍賞を行う新たなローカル・ガヴァナンスの在り方がみられるようになったことが解明できた。 研究成果の公開については連携研究者の佐川徹と共に本科研プロジェクトと共催で、日本文化人類学会中部地区研究懇談会(中部人類学談話会)第222回例会「劣悪なガヴァナンスの人類学へ向けて」を開催し、本研究の成果を総括した。また、 IUAES (International Union of Anthropological and Ethnological Sciences) Inter-Congress 2014においても口頭発表した。 その結果、「構造的機能不全主義(国家の長期にわたる機能不全との関係で地域社会を捉え直す理論)」という理論的アプローチを案出し、ローカル・ガヴァナンスと国家ガヴァナンスの関係性を「(機能不全に陥った)国家を代替する社会」という視点から描き出す新たな民族誌的アプローチを創出することができた。このように新たな人類学的地域研究理論の再構築への見通しが得られたことは本研究の大きな成果であった。
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