本研究は長崎県の伝統的三大神楽である平戸神楽、壱岐神楽、五島神楽の誕生とその発展過程について、16世紀の長崎におけるキリスト教の布教と受容、その急速な広がりへの対抗措置として形成・強化されたものと位置づけをし、文献調査およびフィールド調査を中心とした比較研究を行った。長崎におけるキリスト教の布教は、大航海時代、南蛮貿易と世界システムとセットで平戸に入り、貿易の拡大とともに短期間に一大勢力として各地域に浸透した。自由港市として開港していた平戸藩は全国神楽調査に着手し独自の平戸神楽を編み出し、五島列島一円の「支配体制」のシンボルとして広大な海域を含む領域支配のための権力正統化機能を果たしてきた。
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