研究課題/領域番号 |
24651277
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
中生 勝美 桜美林大学, 人文学系, 教授 (00222159)
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研究分担者 |
渡辺 修一郎 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (20230964)
中村 衛 琉球大学, 理学部, 准教授 (60295293)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 台湾 / 蘭嶼島 / 高線量のホットスポット / 津波 / 地層観察 / サンゴの年代測定 / 健康アンケート |
研究概要 |
台湾南部の離島、蘭嶼島で平成24年8月末から9月初めにかけて、津波の痕跡調査と放射線量の測定、健康アンケートの作成と委託調査をおこなった。 今回の調査で、津波の痕跡と放射線量の高い場所が見つかった。連携研究者の加藤洋准教授は、島での線量を調査して、核廃棄物貯蔵場の付近のみでなく、島全体の環状道路を、500メートルおきに計量してまわり、島の3か所から2~6μSv/hを計測した。台湾電力会社は、島に数か所の線量測量計を置いて放射線量の測定を公開しており、これほど高い値が出るとは想定していなかった。そこで台湾メディアにも取り上げられ、社会的反響が大きかったので、台湾政府の原子力委員会、立法院なども、我々の調査に関心を持ち、原子力委員会の招聘で、我々の調査の結果を報告し、かつ同年11月に共同で再度測定をおこない、更に60~100μSv/hの線量が高い場所が見つかった。原子力委員会は、電磁波の影響だというが、こちら側の実験結果では放射線測定器が電磁波の影響を受けることはなかった。 次に、津波については初歩的な調査成果が上がり、700年間に3回の津波の痕跡を見つけることができた。この結果に基づき、今年度はさらに詳しい分析を行う予定である。 健康アンケートは、2013年4月になって、やっと50件のアンケートを回収することができて、この分析をしているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
津波の痕跡調査に関しては、調査を実施する直前に来襲した台風によって地層が露出し、その中から石垣島の津波研究と同様な土石流の上に海の砂が入った地層を発見した。海の砂であることと、その年代について、資料を持ち帰り分析をして、700年間に3回の津波、ないし大型台風による大波が来たことを証明できた。最初の調査として、かなり成果が上がり、平成25年度の調査で、津波の痕跡の場所をさらに詳しく調査することができる。 環境放射線を測定していて、放射線量の高い場所を測定した。その場所を、再度測定したが、やはり高い値を示した。その社会的貢献が認められ、台湾の立法院(日本の国会に相当)から感謝状を贈られた。まだ、その原因がいかなる放射性物質か確定できていないが、今年度の研究で、その点を明らかにする。 健康アンケートは多岐にわたって設問しており、日常生活、食生活について細かな実態を明らかにできた。従来、当該地域でのアンケートは実施されたことがなく、今回が初めて実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年8月末から9月初めにかけて、再度現地調査を実施し、津波の痕跡と同定できた場所の地層から、津波の堆積物を測定するサンプルを採取し、持ち帰って年代測定をする。また津波石と判断できる石の見通しが立っているので、その石に付着するサンゴを採取し、その年代測定をおこなう。前年度発見した堆積層の砂の起源を探るため、堆積層および海岸域の砂の微化石(有孔虫)分析をおこない、堆積層が津波起源であるかどうか明らかにする。 環境放射線に関しては、ホットスポットとなった場所からサンプルを採取し、核種の同定をおこなう。この他、島の周辺道路の放射線量の測定、核廃棄物貯蔵場から風下になる場所の植物・沈殿物のサンプルを採取し、その放射性物質を測定する。 健康調査に関しては、昨年度の第1回のアンケートを基礎にして、他の集落でのアンケートを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年8月末から9月初めにかけて現地調査を実施する。経費は、この時の渡航費として旅費、宿泊費、日当に大半を費やし、津波サンプルの測定、環境放射線測定のデータ分析、健康アンケートの集積で、人件費を使用する。
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