研究課題/領域番号 |
24651283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 晶子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40361589)
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研究分担者 |
飯野 由里子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 非常勤研究員 (10466865)
星加 良司 東京大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (40418645)
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キーワード | クィア理論 / 障害学 / ナショナリズム / 3.11 / 生政治 |
研究概要 |
2年目となる本年度は、昨年度の研究を踏まえ、本研究全体の目的でもある3.11以降の日本についての考察への取り組みが開始された。 具体的には、6月に公開シンポジウム「『危機』の身体ークィア、ディサビリティと〈3.11〉以降の日本」を開催し、本多創史氏(東日本国際大学福祉環境学部)、高橋準氏(福島大学行政政策額類)の二氏をお招きして、〈危機〉を契機とした生存の困難とヴァルネラビリティとの不均等な振り分けについての議論をおこなった。 個別の研究においては 1. 分担者清水は、障害理論、あるいはbio/necro politicsについての議論を参照しながら、クィア理論において、可動性や距離と近接性といったテーマ群がどのように論じられ、かつどのような問題を残して来たのかを考察した。また、とりわけ可動性の問題を再生産要請というテーマと絡めながら、3.11の〈危機〉への対応の言説がいかにして特定の身体に対する国家による不可能な要請とかかわるのかについて、公開ワークショップにおける報告をおこなった。 2. 分担者飯野は、東日本大震災後、「自発的」に「災害管理」を行うことが強く促されるような社会状況において、どのような身体-自己がより望ましいものとして産出されつつあるのか、またそこにフレキシビリティをめぐる言説がどのように関わっているのかについて、国及び各自治体で見直しが進められてきた防災教育や防災対策の取りまとめ内容に着目し考察を行った。 3. 分担者星加は、「危機」が前景化した社会に特徴的に現れる傾向を「トリアージ的思考の日常化・常態化」という観点から整理し、3.11後の日本社会に生じた様々な現象の理論的な位置づけについて検討した。さらに、生の序列化をもたらすそうした傾向が露骨に顕在化する領域として、障害のある身体に対する優生的介入の諸実践について、「危機」の信憑を高める歴史的文脈との連関において考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度前半は、シンポジウム開催にむけたメンバー内での議論およびシンポジウム開催準備にあてられた。 年度後半はこのシンポジウムの内容をさらに深めるべく議論をおこない、さらにそれを含めたシンポジウム報告の公開を準備する予定であったが、代表者清水の体調不良のためにこの部分を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの成果に基づき、25年度のシンポジウムの議論を検討しつつ研究方向の微調整を行った上、あらためて日本におけるクィア障害理論の可能性を提示する。また、研究課題全体の成果のとりまとめと公表をおこなう。具体的には、昨年度に進めることのできなかったシンポジウム報告公開を含めたウェブサイトの作成と、公開研究会あるいはシンポジウムの開催とを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に作成予定であったシンポジウム関連内容を含むウェブサイト作成に遅れが生じたため。 ウェブサイトの作成を本年度にまわすため、その作成費用と、最終年度の報告作成費用にあてる予定。
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