女性、高齢者、若者、障害者を含め多様な人々が参画できる労働市場の形成は、少子社会において政権を問わず重要な取り組みとなりつつある。しかし、外国人の場合社会統合政策に含まれない。また外国人間での差も大きく、新日系母子は人材育成の取り組みのための予算措置の大きいEPAに比べ、新日系母子は対照的に自己負担である。新日系母子に関しては1994年に首脳間でその問題が指摘されつつも、私的なことという理由で問題が放置され、さらに興行ビザの改定にその後10年を必要とした。問題解決のためには国籍法改定など法的な改定が必須である。 当事者はさまざまな問題を抱えている。第1は、新日系人の特定と認知、養育、渡航のための戸籍の取得、再取得などである。第2は日本語能力の向上と職業訓練である。興行ビザ、新日系母子は階層問題でもある。早くから来日した経験から学業年数が短く、日本・フィリピン双方で就労困難の問題を抱える。子女の教育も含め、日本語教育、職業教育、人材育成は両国で必須である。第3は人材育成コストの負担問題である。新日系母子の経済的自立には両国での人材育成が必要である。現在はビザなど書類作成、日本語教育、職業訓練は当事者負担であり、約50万から60万円の債務を抱え来日する。これは労使の対等な関係構築に困難をきたし、その結果さまざまな問題が発生する。例えば夜勤割り当ての過酷労働の強要、強制貯蓄、権利放棄書、社会保険未加入など違法な状態における労働を余儀なくされている。同等報酬要件は確認できない。本来移動の自由、職業選択の自由を持つ人びとが、債務を抱えることにより束縛されている事案を確認した。人材育成はこうした人々を排除するため、人材育成の国内要件の解消と送り出し国受け入れ国双方における人材育成制度の確立、外国人・日系を含めた社会統合政策の実施が重要である。
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