マスメディアの本格的大衆化時代に婦人雑誌の読者であった女性(マスメディア情報の受け手側)、および、婦人雑誌を舞台として活躍した流行通俗小説作家の親族(マスメディア情報の送り手側)への、ライフヒストリー・インタビュー調査をおこなった。前者の調査対象として、現在直接の面談が可能な年代で、当時婦人雑誌を講読する経済的余裕と読書習慣をもっていた社会階層の女性(高等女学校学歴、現在80歳~ 90歳代)3名にインタビュー依頼を行い、調査協力いただいた。後者の調査対象として、戦前に女性向け通俗小説作家として著名であった加藤武雄氏の家族・親族3名にインタビュー依頼を行い、調査協力いただいた。なお、当初予定していた、近畿県内の旧制高等女学校もしくは女子専門学校の同窓会組織に協力を依頼しての郵送調査は、個人情報保護の観点から実施することができなかったため、加藤武雄氏の子女のご協力を得て、かつての婦人雑誌読者層といえる知人をご紹介いただき、知人つながりで調査依頼を行うことになった。 各調査対象者それぞれに延べ6~10時間のデプス・インタビュー調査を行うことによって、婦人雑誌情報の受け手側と送り手側の両者の視点から、昭和初期の家庭教育・学校 教育・マスメディアのそれぞれがもっていた教育的機能の相互の連関を、個人の「女性」としてのライフヒストリーという時間の流れの中に位置づけるための貴重なデータを得ることができた。 本研究が目指す、メディアと読者の関係性を引き出すための新しいライフヒストリー・インタビュー調査方法を模索・確立するという目的に向けて、引き続き追加調査を行いながら、本年度得たデータの解釈・分析をすすめ、今後、研究成果として公表する予定である。
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