研究課題/領域番号 |
24652003
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
森下 直貴 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70200409)
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研究分担者 |
別所 良美 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (10219149)
李 彩華 名古屋経済大学, 経営学部, 准教授 (10310583)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 井上哲次郎 / 形而上学 / 教育勅語 / 加藤弘之 / 進化論 / 岡倉天心 / 中村正直 / 修養 |
研究実績の概要 |
本研究の特徴は、第1に、従来の固定した評価枠からできるだけ距離をとり、史料に内在的に向き合ったところにある。具体的には、哲学会初期の機関誌『哲学会雑誌』をつぶさに調査し、当時の哲学者たちの姿をいわば生態学的に浮かび上がらせたことである。このアプローチは思想史方法論として有効であり今後とも活用できる。第2の特徴は、問題設定の基本的視点に関わる。明治期の「日本哲学」は過去70年間、戦後イデオロギーの枠組みに妨げられ、正当に評価されてこなかった。しかし、その枠組みを外して捉えたとき、日本哲学が、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、当時の「欧米哲学」とパラダイムのレベルで共通の問題に取り組んでおり、その意味では、特殊な「日本精神」の側面だけでなく、同時に「世界哲学」の側面をもっていたことを解明した。第3の特徴は、「世界哲学」の観点から、第二世代にあたる井上哲次郎の形而上学(「現象即実在論」)を中軸にして、第一世代の西周(「性理学」)から第三世代の西田幾多郎の初期哲学(『善の研究』)にいたるまで、明治期「日本哲学」の基本構造を把握したことである。井上の形而上学は、平等無差別を志向するコスモロジカルな<同情>の形而上学として規定される。そしてこの形而上学が明治期「日本哲学」全体にとってパラダイムの位置を占めることを確認した。第4の特徴は、井上以外には、加藤弘之の進化思想から、西村茂樹と中村正直の修養論、井上毅の教育勅語観、岡倉天心の美学思想、横井時敬と柳田國男の農本思想までを取り上げることによって、明治思想全体に日本哲学を関連づけた。そして以上の見通しをもって日中国際シンポジウムを企画・主催した。中国側研究者との交流はきわめて有意義であった。それを通じて、日本と中国の哲学思想(さらには人文学)の形成と展開を比較する「知の制度化」の視点が得られたことは望外の成果であった。
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