本研究は、源義経が平泉を脱出し蝦夷が島に渡り、蝦夷の王となり、さらに義経大明神として祀られたという《義経北行伝説》は、国境を越え他民族の歴史と自己同一化することを可能とした伝説であることを明確にした。さらに、《義経=ジンギスカン》説は、アジア民族意識と深く関わることで、「大東亜共栄圏」の思想と深く結びつき、これを唱えた牧師小谷部全一郎の説は、東洋から「世界統一の君主」の出現を期待する《宮地神道》の思想と、その道を「天祐霊導」、「義経の霊」が導くという《霊学》的確信とが融合した《大アジア主義》であることを明らかにした。
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