研究課題/領域番号 |
24652014
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (00272774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アナーキズム / 日本 / 現代 / 口述資料 / データベース |
研究概要 |
24年度は、前半に、次年度に本格的に実施するインタビュー対象者の抽出作業のため、ビデオカメラ、プロジェクター、スクリーン、DVDドライバー等の機材、および現代日本アナーキズム史関連図書を設置し、資料のデータベース化を開始した。その目的は、研究発表、論文作成のためであり、また、専門家との話し合い、そしてインタビュー候補者へのインタビューを円滑にすることにあり、実際に、この目的に沿って活用することができた。 以上の機材および図書、データベースを基盤にしながら、アナキズム文献センターの協力を得ながら、インタビュー対象者に関する情報や歴史的背景、インタビューの場所や方法、参考資料について指導・助言、専門的知識の提供を受けた。また、同様の専門的知識、およびインタビュー対象者に関する情報を収集するため、各種研究会等に参加し、関西アナーキズム研究会を立ち上げ、交流と意見交換の場を設定した。以上の作業の最終段階で、数名のインタビュー候補者を抽出し、予備的インタビューを行った。 研究成果は、第二次世界大戦直後にアメリカのアナーキストが日本のアナーキストに対して行った物資を通じた支援活動があったという事実を明らかにした論文1点、近年の欧米アナーキズム思想・運動の状況と日本の思想・運動との関わりに関する論文1点、および、同様のテーマに関わる学会報告2回、研究会報告1回、研究集会報告1回がある。 これらの研究成果を通じて、現代世界のアナーキズムと日本の現代史上のアナーキズムとの関係性について一定の見通しを立てることができた。また、これらの研究を発表することを通じて、今年度数名に対して実施したインタビューにおいて良好なコミュニケーションを作り出すことにも成功し、その結果、次年度以降のインタビュー候補者の選定が進み、今後の研究全体の方向性をより明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
図書・資料によるデータベース構築を通じて、世界全体のアナーキズムにおける現代日本のアナーキズムの位置づけについて一定の見通しを立てることができた。その見通しに基づいて、研究成果をまとめ、それらを発表し、さらに、それに関して、助言・指導、専門的知識の提供を受けることにより、見通しを補強する事実や資料を得ることができた。 以上のような調査に基づいて、予備的調査として実施した数名に対するインタビューにおいては、1940-50年代における国外のアナーキストとのつながり、国外の運動からの影響、日本からの情報発信の影響などが明らかになり、現代日本のアナーキズムが国際的な広がりをもっていたことが裏付けられた。また、従来不明確であった現代日本アナーキズム運動に関するいくつかの事実について、インタビューに依拠してその要因や背景を推測することができるようになった。 なお、近年物故者が多く、高齢化も進んでおり、また、運動に関わらなくなった人々や1960~1970年代の活動家たちは、インタビューに応じない傾向が強い、といった当初予測していなかった問題も生じている。 そこで、当初計画していた対象者の人数については若干の軌道修正を行い、対象者をより厳選していくことを通じて、インタビューの内容をより深め、当初の計画通りの目的を達成することになった。以上のような状況を考えれば、本計画は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本調査を実施する。前年度に実施したインタビューを踏まえ、個人情報の保護に関する原則に十分留意しながら、インタビューの方針を最終的に決定するために、日本アナーキズム史研究者から専門的知識の提供を受け、アナキズム文献センター、関西アナーキズム研究会を含む各地の研究会、そして雑誌を通じて情報の提供を呼びかける。また、国内における文献・史資料調査を前年度と同様に実施し、インタビューを実施する上で必要な情報の収集とデータベースの増補・修正を随時行っていく。 以上のような慎重な準備と告知等を行った後、前年度に抽出した対象者全員に対するインタビューを実施する。聞き取りの具体的なポイントは前年度の予備的インタビューと同様の予定だが、前年度のインタビューの結果、質問項目を再検討し、必要であれば前年度のものを補完・修正して実施する。 さらに、前年度と同様、一人あたり複数回のインタビューをする必要が生じることを考慮に入れ、対象者に対してはその点に関する説明、個人情報の保護、インタビュー内容の公表に関する諸原則に関する十分な説明を行い、人権に細心の注意を払ってインタビューを実施していく。そのため、前年度同様に、インタビュー対象者の居住地への往復の旅費を計上する。 以上の研究に依拠した研究成果を、論文もしくは口頭報告として年度末までに作成し、次年度の総合的な研究成果作成に向けて準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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