研究課題/領域番号 |
24652020
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高岸 輝 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80416263)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 絵巻 / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 / スイス / 土佐光信 |
研究概要 |
中世の絵巻とやまと絵に関し、3件の雑誌論文、3件の口頭発表、3件の共著として発表した。論文にて、(1)「十六世紀やまと絵様式の転換」は、土佐光信と光茂との間に横たわる様式の濃淡の差を分析、(2)「土佐光信と室町絵巻」は光信絵巻の概観、(3)「中世後期絵巻の様式展開」は、南北朝から室町の絵巻における様式展開を、先行する主要論文の批判的検討を通じて俯瞰した。 口頭発表。(1)「中世絵巻の様式展開」は論文(3)に基づく内容。(2)From Painting to Print to Paintingは、国際美術史学会コロキウムのテーマである「美術における複製」にあわせ、「融通念仏縁起絵巻」が肉筆本から版画化され(明徳版本)、それが清凉寺本で再び豪華な肉筆本へと転写される過程を追う。(3)The Amewakahiko Narrative Handscroll in the Museum of Asian Art, Berlin and the Tosa School of the Muromachi Periodは、美術品の移動をテーマにするシンポジウムにおいて、ドイツに所蔵される室町絵巻を紹介。 図書では、(1)『論集・東洋日本美術史と現場―見つめる・守る・伝える』(共著)において「合戦絵巻の東北」と題し、古代から中世にいたる東北を舞台とした合戦絵巻の政治的意義を問う。(2)『お伽草子展』図録では、「地蔵堂草紙絵巻」と土佐光信の活動について述べる。(3)『アメリカに渡った物語絵 絵巻・屏風・絵本』(共著)では、「メトロポリタン本「北野天神縁起絵巻」の図像と様式」と題し、鎌倉後期における同主題作品の転写の意義と成立年代を推定する。 いずれも、作品研究に基づきながら、様式展開、作品の異同、転写系統など絵巻を巡る基本的な問題について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の論文や口頭発表に加え、国内での絵巻作品の調査や、国内外の絵巻研究者との方法論的議論などを継続的に進行中。加えて、サントリー美術館「お伽草子」展では、出品された絵巻に関する図録論文や、記念講演というかたちで研究者及び一般向けに成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行われてきた絵巻研究を俯瞰し、方法論の変遷の分析を継続するとともに、内外の絵巻研究者との交流を通じて、絵巻学のフレームワーク形成を検討する。国内外での絵巻の作品調査も引き続き行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内および国外での絵巻調査、および研究者との情報交換のために必要な旅費を主要な使途として予定している。
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