研究課題/領域番号 |
24652023
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
吉田 朋子 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 講師 (80609082)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 美術品輸送 / フランス・アカデミー / ナポレオン / 梱包 |
研究概要 |
美術品・貴重品の輸送を直接取り扱った先行研究がほとんどないことはすでに分かっていたので、間接的に関わりがあると思われる先行研究を検討した。しかし、梱包・輸送そのものについて多くの情報をもたらすような新たな事例はそれほど見つからなかった。とはいえ、マリー・アントワネットの衣装デザイナーであったベルタンが使った衣装輸送箱など今後詳細に検討すべきものもいくつか見出すことが出来た。また、今回は長距離輸送を対象としていたが、パリ市内での作品移動など短距離輸送の方が、国際的な長距離輸送よりも多くの情報を得られる可能性が高いことが判明した。 当初より情報が得られることが有望視されたローマのフランス・アカデミーについては、先行研究や一次資料を収集し、検討した。ローマのアカデミー院長からパリの王室建造物長官に送られた通信文には、作品の梱包・輸送への言及がいくつか見いだされ、その中には絵画の開梱方法の指示等に加えて、梱包技術に巧みな者の個人名までも挙げられている場合があることが分かった。しかしながら、それらの記述は大体において具体性を欠くことも判明した。 一方で、画像資料に関しては、オークションや画家の工房を主題とする作品を中心に検討し、美術品の取り扱いを記録している作品のリストアップを始めることが出来た。また、梱包・輸送そのものについても、ナポレオンおよびドゥノンによる美術品略奪に関して、公式記録画家バンジャマン・ツィクスが美術品輸送を描いた素描があることが判明した。これらの画像資料のもたらす情報は断片的ではあるが、集積することによって、新たな知見が得られることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度に担当した講義科目が例外的に多かったため、エフォート率が下がり、また、海外での長期調査の日程が設定できなかったことが最大の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
一次資料から美術品の梱包・輸送を調査するという課題に関しては、19世紀初め以前の文書や画像資料だけではかなり情報が少ない可能性が高いということをふまえ、19世紀後半にも調査対象を広げることとする。また、長距離輸送のみならず、短距離輸送にも対象を広げる。 日本国内で文献調査の目途をつけた後、フランス・ドイツでの文書調査・美術館等での聞き取り調査を数回行うこととする。 また、日本国内での美術品輸送に関しては、大手輸送会社・美術館・画商への聞き取り調査を行うこととする。さらに、長距離・長期間輸送の参考事例として、明治時代以降に渡欧した日本人画家が帰国の際に作品をどのように持ちかえったのかを調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ひきつづき、先行研究と一次資料の調査を進める。梱包・輸送の具体的な側面については情報量が少ないことが判明したことを受け、公式文書だけではなく、グランド・ツアーに出かけた富裕層の回顧録などの非公式文書、当時の新聞など定期刊行物にも調査対象を広げることとする。 画像資料に関しては、ツィクスに関する調査を進めるとともに、さらなる実例を探すこととする。 以上について国内での調査にある程度の目途をつけたうえで、フランス国立図書館・文書館・ルーヴル美術館素描室などでの現地調査を行う。 日本国内については、美術館・大手輸送会社への聞き取り調査を開始する。
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