研究課題/領域番号 |
24652028
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
平 諭一郎 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 講師 (10582819)
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研究分担者 |
伊東 順二 東京藝術大学, 社会連携センター, 教授 (30422637)
荒井 経 東京藝術大学, 美術研究科, 准教授 (60361739)
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キーワード | 現代美術 / 現代アート / 芸術 / 保存 / 修復 / 文化財 / コンテンポラリー / 文化政策 |
研究概要 |
本研究は、素材や技法が多様化、複雑化した現代美術作品の保存・修復における現状を整理し、現代美術を含めた新たな文化財保存・修復理念を提唱するための人的ネットワークを構築するものである。2013年度も引き続き、現代美術作品の保存・修復についての現状調査、および関連する資料や情報収集を行った。現代美術作品の保存・修復ついての現状調査については、国内外の美術館や博物館にて学芸員、キュレーター、修復家にヒアリング調査を実施した。国内では、現代美術の展覧会を数多く企画し、様々な形態の作品を収蔵している、東京国立近代美術館、東京都現代美術館における事例をヒアリングするとともに情報共有を図った。その他にも、現地での取材や滞在を経て制作された作品を公開し、地域の財産として収蔵する「太宰府天満宮アートプログラム」の現況を調査し、制作から収蔵、保存、修復までの一貫したケーススタディを行った。 また、国内において現代美術作品の修復を手がけている修復家にヒアリングを行い、一般的な素材で制作された絵画や彫刻だけでなくプラスチックや有機物、インスタレーションや映像を含む作品についての修復事例を調査し、今後の現代美術における保存、修復理念を考察している。次年度は、ビデオ・アート (video art)における、ブラウン管テレビ(CRT)を用いた作品の保存理念および修復方法について考察し、物質的な「もの」としての同一性およびコンセプトの同一性を維持する新たな修復方法を提示する。ブラウン管テレビを用いた作品は、現代美術の中でも特に早急な修復方法の確立が叫ばれているため、当該分野の研究の発展に寄与できるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。 2012年度においては、まず美術館、博物館における調査項目および調査方法について検討し、研究全体の計画を策定することから始めた。国内外の様々な美術館や博物館を訪問したことにより、現代美術における保存・修復に関する人的ネットワークは広がっている。また、美術館、博物館職員へのヒアリング調査のみならず、文献や論文をはじめ、関連するウェブサイトやブログ、動画共有サイトなどからも情報収集を行った。 2013年度においても引き続き人的ネットワークを広げるとともに、現代美術作品の修復事例を統計的にデータ収集した。現在までおおむね研究開始時の計画どおり順調に進展している。今後は現代美術作品の実践的な修復方法を検討し、新たな文化財保存・修復理念を提示する。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、主に以下の3点について研究を推進する。 (1)現代美術作品の保存・修復についての現状調査、および関連する資料や情報収集・・・国内外の多くの関係者にヒアリングを行い、統計的にデータを収集する。INCCA(International Network for the Conservation of Contemporary Art)の研究者データベースから、主に国外において現代美術作品を多数収蔵している美術館や博物館、研究機関などを訪問し、実際に現代美術作品の修復実績を有している機関へのヒアリングや意見交換を予定している。特にTime Based Mediaの研究が進んでいるTATEのPip Laurensonを訪れ、事例の調査および情報収集を行う。 (2)現代美術作品の保存修復方法の提示・・・現代美術の中でもその保存や修復が最も困難だと言われている、ビデオ・アート (video art)―なかでもブラウン管テレビを用いた作品―の保存理念および修復方法について考察し、ブラウン管テレビの物質的な「もの」としての同一性を保持しながらも、内部の電気的機構を代替することで、より耐久性の高い受像機として修復する方法を提示する。 (3)現代美術を含めた新たな文化財保存・修復理念の考察・・・現代美術作品の保存・修復についての現状調査および収集した情報を通じ、日本の伝統的な保存、修復理念と欧州のコンテンポラリーアートの保存、修復理念を融合させ、現代美術を包含した新たな文化財保存・修復の理念を提唱する。 また2014年度には、研究成果を文化財保存修復学会にて研究プレゼンテーションするとともに本学研究紀要およびホームページにて公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
TATEにおける現代美術作品の保存と修復事例調査および研究者へのヒアリング日時が、先方の都合により次年度に変更となったため。 2014年度にTATEを訪問し、現代美術作品の保存と修復事例調査および研究者へのヒアリングを行う。
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