研究課題/領域番号 |
24652030
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
長嶌 寛幸 東京芸術大学, 大学院映像研究科, 准教授 (10621790)
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研究分担者 |
松井 茂 東京芸術大学, 芸術情報センター, 助教 (80537077)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 表象文化論 / サウンドデザイン |
研究概要 |
24年度前半、「デジタル音響技術による新たな物語表現研究」の基礎研究として、『エンジュル・ダスト』(1994年製作、石井聰亙監督作品)と『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(2005年製作、青山真治監督作品)の検証を行った。 『エンジュル・ダスト』では、現場で収録した音声(現実音)を「楽器」として扱い、劇中音楽の主要な構成要素とすることで、単なる演出以上のサウンド・デザインを行っている。オリジナルDVD音声を抽出し、KYMA、IRCAM Toolsなどを用いて、音声モーフィングを含んだ音響テストを行なった。 『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』では、物語のクライマックスで主人公が演奏するミュージック・コンクレートを含んだノイズ・ミュージックの構成要素を、劇中に主人公達がフィールド・レコーディングした音源を多く用いた。サウンド・デザイン自体が、物語表現と密接に関わり、単なる音楽以上のサウンド・デザインを行っている。『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』については、作品が制作された2004年当時のデジタル音響技術と現在の技術の比較を行なった。また、研究の過程で「デジタル音響の再生環境」にも注目し、現在の映画における音響再生環境のスタンダードである5.1チャンネルと、映像を含まない場合のマルチ・チャンネル音響の基本である8チャンネルでの映像と音響の相関性を比較、検証するために『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』のクライマックス・シーンの5.1チャンネル・ヴァージョンと8チャンネル・ヴァージョンを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KYMA、IRCAM Toolsなどの新しい音響ソフトを用いた『エンジュル・ダスト』、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』の再構成のテストはおおむね完了しており、石井聰亙監督、青山真治監督との討議を踏まえた上での発表を準備している段階である。 今回の研究の大きな目的の一つである音声モーフィングに関しても、KYMA、IRCAM Toolsを用いることで、来年度に予定しているテスト撮影への準備は完了している。 また、テスト撮影の「ドラマ部分」を補強するための実景撮影はすでに完了しており、先行して映像は実景をベースとし、音声に関しては音声モーフィング技術をフューチャーした8チャンネル音響映像作品『Roadside Picnic』として作品化し、発表を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
年度前半は、現段階の『エンジュル・ダスト』、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』を元に、石井聰亙監督、青山真治監督と「デジタル音響技術と物語表現の接点について」の討議を行う。討議の結果をフィードバックした上で、『エンジュル・ダスト』、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』のマルチ・チャンネル版(5.1ch、8ch)を完成させ、上映を行なう。石井聰亙監督、青山真治監督との討議内容は出版物として公開する。 年度後半は、「デジタル音声モーフィングに基づく物語表現のカタログ」となるテスト・ムービーを作成する。すでに制作を開始している『Roadside Picnic』のドラマ部分を制作し映像作品として完成し、公開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
テスト・ムービー制作費、研究成果資料としてのDVD、ブルーレイ制作費を予定している。
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