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2013 年度 実施状況報告書

失木鋳造技法の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24652031
研究機関富山大学

研究代表者

三船 温尚  富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)

研究分担者 長柄 毅一  富山大学, 芸術文化学部, 教授 (60443420)
キーワード有機物原型焼失鋳造技法 / 非分割鋳型鋳造法 / 東大寺八角燈籠 / 3D形状計測 / 幾何形体精度調査 / 検証鋳造実験 / 青銅鋳物 / 古代鋳造技法
研究概要

失木鋳造法はこれまで提唱されていない古代鋳造技法であったが、北方遊牧民の青銅器研究者らとの共同研究から、着想した研究である。遊牧民青銅器のフクの縄目文様や糸巻文刀子、糸巻文獣頭金具など、従来の蝋型鋳造法では説明できない青銅製品があり、解釈に苦慮していた。木を原型にして鋳型内で燃焼焼失して鋳造する失木鋳造法の着想によって、木以外の有機物である糸や縄の現物を原型にして焼失鋳造することが可能なら、糸巻文に鋳型分割線がないことの説明がつく。一方、有機物の焼失には無機質が灰になり鋳造障害になるという反論が中国の考古学内でも起こり、縄目文のユウ釣手に鋳型分割痕跡があることから、有機物原型焼失鋳造法に否定的な立場をとる研究者もいる。そこで、高さ47センチの四角柱枠を杉棒で組んで鋳型非分割法の失木鋳造の実験を行ったところ、鋳造は成功した。木の焼失を早めるために、木が炭化した時点で、鋳型を部分的にでも分割すれば短時間で焼失できるため、あるいは灰を除去するため、ユウ釣手の分割范線があったのではないかと推測できた。失木鋳造法の着想から、木以外の有機物である縄や紐の焼失に至り、中国青銅器の可動式ユウ釣手1式~5式の鋳造技法解明の成果を得た。これには有機物焼失鋳造法を用いて解明できるもので、失木鋳造法の広がりとなった。
日本列島で古代に鋳造されたもので幾何学的形状を持つものはいくつかあり、回転体である銅鏡や、あおり形状である銅鐸などである。しかし、直線的な幾何形体のものは多くなく、巨大な東大寺八角燈籠が八角であるがゆえに特殊な鋳造法を用いたと推測した。特に羽目板や扉などを取り付ける火袋は直線度、直角度、等間隔度などが求められ、3D形状計測し、その精度を科学的に解明し、木工の指し物技法で組んだ木製火袋原型を用いた失木鋳造法の検討を行う計画を立て、平成25年10月に東大寺で3D計測を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

遊牧民青銅器の考古学者との共同研究により鋳造技法が不明だった糸巻文青銅器に着目し、木原型焼失鋳造の基礎、展開、応用実験で検証を重ねた。特に高さ47センチの応用実験青銅枠の成功は、木原型焼失での灰の障害がないことと、焼失の簡易を証明した。これによって、難解な中国殷周代のユウの可動式釣手の連結部分に有機物原型焼失法を用いるという解釈に至り釣手全形式の鋳造法を論文発表し、中国青銅器の技術研究を大きく進展させた。日本では失木鋳造法が想定できる東大寺八角燈籠の火袋計測が、本研究の大きな成果になるが、東大寺、文化庁、奈良市文化財課への交渉を経て、平成25年10月に全体をFARO社のFocus3D(点間距離2mm)で、火袋を計測はGOM社のATOS Compact SCAN 5M(点間距離0.481㎜)で3Dスキャンした。このデータを解析して、火袋の形状特徴を解明し、失木鋳造法を検討できる段階に到達している。これらの歩みから評価した。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、3年間の最終年度となる。東大寺八角燈籠には、別に外した音声菩薩が浮き彫りされた羽目板があり、これの3D計測により、指し物技法と木彫技法の木原型からの鋳造を確認する計画である。子の計測許可が得られないときは、平成25年度に入手した八角燈籠の3Dデータから、8本の縦柱の直線度、平面度、直角度、等間隔度など精度を数値化したデータを多角的に作成し、今後の多くの研究者が活用できる資料を開示公表する。また、横断面図、縦断面図など作成し、歪みなどの変形を把握する。成果はアジア鋳造技術史学会誌FUSUSで論文発表し、東アジアを中心とした国際学会で発信する。

次年度の研究費の使用計画

当該年度は当初予定の、東大寺大仏殿前の八角燈籠の3D計測を行った。最終年度で八角燈籠の国宝羽目板音声菩薩像(東大寺ミュージアム内展示)の3D計測を当該年度中に計画した。見積もりではこれの経費が70数万円になり、次年度(最終年度)の直接経費が80万円で、全体の計画を圧迫することが判明した。当該年度に計測した八角燈籠計測図の数値分析経費を執行保留にし、国宝羽目板音声菩薩像3D計測の許可を打診しながら、最終年度80万円の執行計画を練り直すことにしたため次年度使用額が発生した。次年度使用の8万円と80万円の88万円で、研究成果を上げるよう計画中であるが、当該年度から数度打診した計測許可について、現時点で、東大寺ミュージアムからは回答が来ていない。
国宝羽目板音声菩薩像計測の許可が下りればこれにほとんどを執行し、データ分析は他の経費等で以後数年間かけて行うが、下りなければ、データ分析を次年度内に終了する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] X線CTスキャンと范線調査から検討するユウ釣手鋳造技法の変遷-泉屋博古館所蔵青銅器について-2013

    • 著者名/発表者名
      廣川 守、三船温尚
    • 雑誌名

      アジア鋳造技術史学会誌FUSUS

      巻: 6号 ページ: 35-59

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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