研究課題/領域番号 |
24652036
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
野角 孝一 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 講師 (50611084)
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研究分担者 |
平 諭一郎 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 講師 (10582819)
荒井 経 東京藝術大学, その他の研究科, 准教授 (60361739)
松島 朝秀 高知大学, 総合教育センター, 特任准教授 (60533594)
高林 弘実 京都市立芸術大学, 美術学部, 講師 (70443900)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本画 / 支持体 / 表現 |
研究実績の概要 |
日本の絵画における支持体は紙、絹、板など様々であり、支持体に応じて表現を変えてきた。しかし洋画や日本画などのジャンルを基準とした絵画様式による分類が重視される一方で、支持体に伴う表現の差異についてはあまり注目されてきていない。そこで本研究では日本画における支持体と表現の関係に焦点を当て、特定の支持体においてのみ可能となる絵画表現の独自性について再評価することを目的とした。 そこで本研究では、特に大正期前後の野長瀬晩花作品を対象とした科学的調査を通して、野長瀬晩花の表現の意図を探るとともに、西洋画から受けた影響についての具体的な検証を試みた。 その結果、野長瀬晩花が渡欧以前に布に描いた《初夏の流れ》は、鮮烈な色面表現や片隅法による立体感の表現からも、西洋画の影響を受けた作品であることがわかるが、下地として塗られた胡粉は布の織り目を埋めるような下地処理ではなく、従来の日本画で行われてきた発色を良くするための下地であった。一方、渡欧後に描かれた《スペインの田舎の子供》は、一見すると油彩画やフレスコ画と区別がつかない作品となっており、その要因には油彩技法を参照したと思われる下地処理の導入があった。ここには確実な表現技法の変化があり、《スペインの田舎の少女》以降に見られる野長瀬晩花の技法が、表面的に西洋画を模倣した技法ではなく、パリで学んだ油彩技法の習得によって得られた知見に基づいて生み出された技法として評価できる。今回の調査では、西洋画に接近したと言われる大正期の日本画の足取りを野長瀬晩花の作品から読み解くことができた。日本画の西洋画化が、輸入された写真図版による影響ばかりでなく、日本画家の渡欧によって習得された油彩技法に基づいていたということを作品調査から明らかにできた点で有益な調査となった。
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