平成26年度は本研究の最終年度にあたり、日本万国博での映像作品の擬似的上映を目標とした。すでに発見した日本政府館の『日本と日本人』は35mmフィルムダブルフィレーム仕様だが、これを確認する映写機がすでに存在しないため、デジタル化と8面合成による上映確認を計画したが、音声の発見に至らず、現在所定の倉庫にて継続的に保存している状況である。一方電力館(電気事業連合会)の制作作品は5面マルチ映像作品であるが、16mm縮小合成版が奇跡的に保存されていることを確認した。これは現在、九州大学、脇山研究室にて「預かり」となっているため、とりあえず廃棄処分を免れている状況である。フィルム原版の発見には至っていないが、この縮小版でのデジタル化を終えているため、暫定的な上映は可能な状況である。今年度は3年分の総括として「なぜ展示映像は保存されないのか~アーカイブの現状と課題~(仮題)」を執筆中であり日本展示学会誌にて発表の予定である。本研究の背景として記述したのは以下のとおりである。 「映画が100年以上にわたって製作・上映されたものが世界の主要なフィルムセンターに原版や複製の形で保存されているのに対して、展示映像はほとんど保存されていない。それは一過性のイベント映像であること、作品ごとに仕様が異なること、2次利用の可能性がないことなどが理由として考えられる。記録と保存がおざなりであったことは、この展示映像が展示学の構成要素でありながら、研究対象とならなかった背景とも重なる。フィルムセンターは必ずしも「映画」だけがアーカイブの対象ではないが、展示映像はほとんど手つかず状態である。世界的にも一部の例外はあるが、「短命・一過性映像」といわれる展示映像がアーカイブされている事例はほとんどないのである。」 今年度までの成果は、次年度からの科研Bに引き継がれ、展示映像の再現システムの検討へと進む予定である。
|