◯最終年度の研究成果:年度のほぼ前半にあたる2014年4月~9月にかけては、浅草の木馬館大衆劇場におけるフィールドリサーチ(舞踊ショー使用曲の実地調査)を前年度から継続した。調査回数はのべ34回、収集したサンプル数は699という結果である。さらに、東京という地政学的バイアスの有無を確認するため、小規模なものではあるが、大阪でも同様のリサーチを実施した。いずれも、調査にあたっては、できるだけ多くの機会を確保するため、研究協力者として学生アルバイトを雇用している。また、後半の10月以降は、ここまでのデータを前年度に収集した分と統合し、いくつかの指標を設定したうえで、単純集計とクロス集計の両面から全体的な統計解析をおこない、その結果について、研究協力者等もまじえて多面的に考察した。 ◯研究期間全体を通じての成果:2年間で最終的に2400件ほどのデータを収集することができたが、「役者」や「観客」といった見せる=見る側の独特な行動様式に関心が向かいがちな大衆演劇研究においては、ほかならぬ「出し物」についてある程度まとまった情報が集約されたことそれ自体が、これまでにない大きな成果であると考える。また、収集されたデータを統計的に分析した結果、現代の大衆演劇における「大衆性」を特徴づける注目すべき事実がいくつか明らかになった。詳細は別の報告書等に媒体に譲るが、狭義の大衆演劇研究においても、広義の表象文化研究においても、一定の寄与をもたらす成果を残すことができたのではないかと自負している。 なお、当初この調査結果は、所属学会が2014年3月に刊行する紀要で報告する予定あった。しかし、投稿準備がほぼ完了したところで事前に予想していなかった不測の事態が発生したためこれを断念し、次号にまで延期せざるを得なくなったのは、研究成果の社会還元という観点からしても、まことに遺憾なことであった。
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