研究課題/領域番号 |
24652040
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
羽田 康一 国際基督教大学, キリスト教と文化研究所, 研究員 (30240724)
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研究分担者 |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (50295458)
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キーワード | ギリシア絵画 / ヘレニズム絵画 / ローマ絵画 / ナラティヴ / テクストとイメージ / 再現図 / 組合せ原理 / 素材と技法 |
研究概要 |
羽田(代表者)はフィロストラトス『エイコネス』の翻訳註解を進め、全82章の7割を終えた。傍ら「ヘレニズム・ローマ絵画における風景」について概観する講演を行った。風景画の概念はヘレニズム時代に生まれた。「トピア」(風景、風景画)はギリシア語の「トポス」(場所)から派生したラテン語である。またギリシアからモチーフを継承して独自の神話表現を開拓した古代ケルト美術について考察した。そこに見られる抽象化による変容は、フィロストラトスに代表されるギリシア人の、美術における「アレーテイア」(真実らしさ)への執着を相対化する。 佐野(分担者)はエクフラシスや絵画についてはまだ正面から論じていないが、発表論文はその契機を秘めている。ダフニスを配する牧歌は『エイコネス』中では「I.6 エロースたち」、および同時代のロンゴス『ダフニスとクローエ』と情景を共有する。アンティゴネー論は「II.29 アンティゴネー」に繋がる。 山口(協力者)は『エイコネス』中の3章「II.14 テッサリアー」「II.16 パライモーン」「II.17 島々」について論じた。東日本大震災の衝撃を受けて西洋古代文献中の地震に関わる記述をテーマとして研究を続けており、地震の神ポセイドーンに関わる章に取材してその一環とした。また古代の居酒屋について発表した。『エイコネス』にはディオニューソス関係の章が10ほどある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は順調に推移したが、初年度の遅れを取り戻すには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
羽田の『エイコネス』執筆が遅れているため、最終年度開催予定の国際シンポジウムを一年延期し、研究期間を一年延長する予定である。 26年度、羽田は『エイコネス』の翻訳註解を完成し、出版社に原稿を渡す。ナラティヴ、テクストとイメージ、『エイコネス』各章の組合せ原理、構図、ギリシア・ローマ絵画における素材と技法についても概観する。佐野、山口はシンポジウム発表論文を準備する。 27年度、同書を刊行。それに合わせて海外協力者2~3名を日本に招聘して、『エイコネス』ないしエクフラシスに関するシンポジウムを開催する。日本側発表者は羽田、佐野、山口ほか数名を予定。可能であれば会場に『エイコネス』の数章の再現画を展示する。論文集の刊行は研究期間終了後になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
羽田による著書『エイコネス』の執筆が遅れているため、最終年度開催予定の国際シンポジウムを一年延期する。 26年度の主な使途は、関連文献購入費(羽田、佐野)、シンポジウムの準備と資料収集のための海外旅費(羽田)。 27年度の主な使途は、関連文献購入費(羽田、佐野)、再現図制作に要する人件費(協力者)、シンポジウム関連の国内旅費(海外協力者)。
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