研究課題/領域番号 |
24652043
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
由比 邦子 桃山学院大学, 国際教養学部, 非常勤講師 (50528586)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インターロッキング / ゴング・チャイム / オーストロネシア語族 |
研究概要 |
本研究「演奏様式に基づく東南アジア音楽文化圏の再画定」は、東南アジアの音楽文化圏を規定するゴング・チャイムという楽器ではなく、特にオーストロネシア語族の分布域において歴史を通じて広く用いられてきたインターロッキングという楽器演奏法、すなわち、ゴング・チャイムも含めて複数人で音高を分担して旋律を組み立てるという行為に着目して、東南アジア音楽文化圏を再画定しようとする試みである。 本研究は従来の音楽学・音楽史研究では注目されなかった分野に関わるものであり、あらかじめ参照できる資料がほとんどないために、主として現地調査の手段をとる。 平成24年度は台湾原住民族の一部族である邵族の杵音の調査を行なった。杵音は音高の異なる8本の杵を使ったインターロッキング奏法で演奏される。数少ない文献の記述より、杵音は旧暦8月の邵族豊年祭の前夜に行なわれると認識していたが、実際に杵音を行なう演奏者にインタビューしたところ、現在では観光客対象の歌舞上演の機会でのみ演奏されるということがわかり、結果的に歌舞上演場のステージで行なわれる杵音を調査することとなった。豊年祭の幕開けを告げるという特定の役割を持つ音楽が本来のコンテクストから切り離されてしまった形で伝承されている実態が明らかになった。 なお、インドネシアで行なわれた第22回国際アジア歴史学者会議において、本研究の概要と意図について発表したが、一つの音楽文化圏を、特徴的な楽器ではなく、通時的に存在する楽器演奏法で再画定するという着眼点の斬新さが歴史学者の注意を引きつけ、多くの賛同を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「平成24年度の研究実施計画」に記載したとおり、台湾原住民族の一部族である邵族の杵音を重点的に調査することができた。演奏者の一人がインフォーマントとして、杵音という音楽について、そして邵族が置かれている現状について多くの情報を提供してくれた。 また、台湾において邵族に関する文献を数点入手でき、調査の際の資料として活用することができた。
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今後の研究の推進方策 |
「平成25年度の研究実施計画」および「平成26年度の研究実施計画」に記載したとおりの現地調査を行なう。 平成25年度はボルネオ島の音楽調査を重点的に行なう。ブルネイ・ダルサラーム、マレーシアのサバ・サラワク両州、インドネシアのカリマンタンを調査地とするが、一つの島とはいえ、各地域間の交通が便利であるとはいえないため、調査行を数度に分ける必要があると考えられる。 平成26年度はインドネシアのジャワ、バリを中心に調査するが、平成25年度のボルネオ調査の結果によっては、インドネシアの他地域、あるいはオーストロネシア語族が分布する他の国々に調査地を広げる可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に、ボルネオ島諸地域での現地調査のための交通費、滞在費、その他諸経費に使用する。また、本研究に関わる日本国内での学会参加のための交通費、滞在費にも適用する。
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