研究課題/領域番号 |
24652048
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
加藤 禎行 山口県立大学, 国際文化学部, 講師 (10318727)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 新聲社 / 文藝新聞 / 出版研究 / 佐藤儀助 / 高須梅溪 |
研究概要 |
平成24年度における科学研究費(挑戦的萌芽研究)の成果としては、加藤禎行「新聲社発行『文藝新聞』解題稿――日清戦後文壇の新聞判型出版物と関連して――」(『近代文学論集』第38号、日本近代文学会九州支部発行、平成25年2月、pp69-85)を研究論文として執筆し公表したことが挙げられる。 新聲社発行の『文藝新聞』は、現時点での文献資料調査では、東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター明治新聞雑誌文庫にのみ所蔵が確認できる新聞メディアだが、これまで、その紙面について言及した研究は存在していなかった。そこで本稿においては、マイクロフィルムおよび原紙閲覧による紙面の確認、および出版経緯に関する同時代資料調査から、『文藝新聞』の性格を明らかにし、中小新興出版社である新聲社が、こうしたメディアを創設していくことで志向していた戦略について明らかにした。 この『文藝新聞』の資料調査に際しては、造士寮発行の文芸新聞であった『造士新聞』、大学館発行の雑誌『活文壇』、鳴皐書院発行の雑誌『新思潮』といった同時代のメディアについても参照する必要があり、本研究計画における科学研究費(挑戦的萌芽研究)によって、閲覧・紙焼複写依頼のために行った出張等で、支援を受けることができた。 平成25年度においても、着実に資料閲覧および資料分析等を進めることで、本研究計画を遂行して行きたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三年間の研究期間を通じて行う基礎作業として、(1)新聲社出版物調査、および書誌情報の充実、(2)新聞雑誌の調査、(3)明治期出版物の調査の三点を、研究計画書では掲げた。 (1)は、新聲社刊行物のうち未確認出版物の確認と情報精度の向上を目指し情報蓄積を目的とするもので、一点一点の出版物の性格を具体化し、新聲社の総体的な出版活動およびブランドイメージを可視化することを目指すものである。(2)は、同時代の文芸雑誌、新聞等に掲載された新刊紹介記事・書評・出版広告・同時代評など、新聲社出版物に関係する副次的な資料を調査収集することで、新聲社の出版活動を再構成することが狙いである。(3)は、同時代に併存していた出版社の出版物を適宜参照することで、新聲社出版物の特性および同時代性を測定するためのものである。平成24年度は上記の三点の基礎作業について、持続的かつ継続的な資料調査を行うことができた。 平成24年度の研究については、取り組むべき個別の研究課題として、優先順位なく研究計画書に掲げていたが、そのうち「明治新聞雑誌文庫蔵『文藝新聞』の検討」という研究テーマについて、所期の計画通り、資料調査および分析検討を進め、研究論文として、加藤禎行「新聲社発行『文藝新聞』解題稿――日清戦後文壇の新聞判型出版物と関連して――」(『近代文学論集』第38号、日本近代文学会九州支部発行、平成25年2月、pp69-85)といったかたちで、成果発表にまで展開させることができたという点で、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書作成の時点では、平成25年度の研究計画について「叢書「アカツキ」の検討」および「社会問題・社会主義との近接に関わる検討」の二項目を研究実施計画欄に記入していたが、同時に、資料的な裏付けの取れたものから優先的に進行させ、随時作業を展開していくとも記していた。 そこで本年度は、上記の二項目についても研究を遂行していくが、「新聲社発行の文学評論書と文壇ゴシップ書の検討」についても注力していくことを平成25年度の重点的な計画としたい。とりわけ妖堂居士著『文壇風聞記』と妖堂居士編『文壇楽屋観』というふたつの書物に注目しながら、この項目については取り組む。平成24年度の資料調査等を通じて、上記の二冊の書物に注目することで、若干の新しい知見が得られると考えるようになったからである。 平成25年度の研究計画においても、着実に資料閲覧および資料分析等を進めることで、本研究計画を遂行して行きたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究計画においては、物品費として300000円、旅費として80000円、人件費・謝金として60000円、その他として60000円を計画している。これは本研究が資料調査旅費やデータ整理データ入力人件費、および明治期刊行物等の文献資料を必要とする研究だからである。
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