新聲社の出版物の書誌調査等から、同社の出版活動が、営利的な経済活動としての出版業というよりはむしろ任意の主張を流布する言論活動としての側面に力点をおいており、結社としての性質が強いことを確認した。また、新聞雑誌等に既発表の文章を再録した出版物からは、新聲社の人的なネットワークと同時に、かつては読み捨てられていた時事的な文章が、再び商品として出版物となり、それが商品価値を持つ状況となっていたことも、うかがえた。また近世期と同様、明治期活版印刷でも紙型の流通は行われており、新聲社廃業後も、かつての新聲社出版物は、紙型が同業者に売却され、書名や体裁を変えながら出版物として流通し続けたことを確認した。
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