本研究は、近代における趣味家の活動が、多方面な領域に与えた影響を包括的に量ろうとする研究であり、その根本的な基礎研究である点に特色がある。この特色を活かすべく、研究代表者牧野は関連する学会・研究会などに積極的に参加し発表を行ってきた。 今年度は、大正・昭和前期の趣味家をめぐる「紙もの」資料に関して、とくに近現代の蔵書家でもあった人々に対象を絞り、調査を行った。とくに集古会と緊密な関係にあった京都の月曜会の有力会員のひとり谷村太一郎氏の蔵書(谷村文庫)のうち、貼り込み帖数点の調査・資料収集に赴き、検討材料を得ることができた。今後は諸領域(絵葉書蒐集・玩具蒐集ほか)の趣味家との緊密な連関を確認すべく、包括的な試掘を試みる予定である。「中世文学史の一隅」(『実践国文学』89号)に、その一部は公刊した。 昨年度口頭発表を終えた(サントリー文化財団研究助成プロジェクト第2 回国際シンポジウム〈テーマ「東アジアにおける大衆的図像の視覚文化論」〉「研究史の交点について――庭つづきの〈学問領域〉」(2014・12・27 於同志社大学)は、発表内容に今年度の収集資料を加え、「趣味家の交点」と改題して公刊した(『実践女子大学文学部紀要』58集)。
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