研究課題/領域番号 |
24652051
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 准教授 (30579107)
|
キーワード | 検閲 / 日韓国交正常化 / ベトナム反戦運動 / 文化運動 / 在日文学 / 韓国民主化運動 / 情報統制 / メディア |
研究概要 |
韓国の独裁政権下で、禁じられた表現あるいは身体的な拘束をうけた人による表現がどのようなルードを媒介としながら移動し、拡散したのかについて注目した。2013年度も以下の三つの点に注目して研究を進めた。 ①2012年度に引き続き、研究基盤を安定させるための研究資料の構築(資料の調査・分析を含む)。東京外国大学の金ウネ氏とともに、1960年代における沖縄の文化運動、韓国の民主化運動、ベトナム反戦運動、日米安保反対運動が複雑に交錯していた東京という空間を軸としながら、それぞれの空間で作られた資料を集めた。 ②日本ーアメリカー韓国を結ぶ共同研究の基盤作りをしながら、複数のワークショップを企画し、研究発表も行った。東アジアにおける「文学ー文化」の「闇」ルートの問題を考える上で、サブ・カルチャーの問題はさけて通れない。この問題を書物・人・思想の移動の問題に接合させる企画も会わせて行っている。ワシントン大学のE・Mack、成均館大学の千政煥、大妻女子大学の五味渕典嗣准教授らとともに、11月8~9日、国際会議「下からの綴り方、他者の文学」(韓国東国大学)という国際会議を企画・発表した。6070研究会を通して複数の研究会を開いた。例えば、2014年2月20日「民衆の記憶と東アジアの民主主義」(東京外国語大学・国際に本研究センターとの共催)2月21日「朴正熙時代の韓国における大衆の記憶と忘却」などを開催した。サブ・カルチャーに関わる企画としては、10月18日にワークショップ「欲望をめぐるポリティクス」(花園大学)、12月3日には講演会「陳腐な世界を宇宙時の視点から見つめる」を企画した。 ③ 複数言語による領域横断的な研究成果の公表を試みた。韓国成均館大学の李恵鈴、韓ギヒョン教授とともに、東アジアの情報統制に関する本を、2014年度夏に、韓国と日本で同時に出版する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年7月に、『戦後というイデオロギー 日本戦後をめぐる記憶のノイズ』(現実文化、韓国語)という単行本が出版され、韓国の『京郷新聞』『ハンギョレ新聞』に紹介され、『マルとファル』などの雑誌媒体に書評論文などが掲載された。また、プルン歴史アカデミーなど、韓国の様々な空間で開かれた拙著をとりあげた書評会に参加し、議論ができたのは大きな収穫であった。 2012年度は、沖縄ー東京ーソウルー光州を重ね合わせながら「文学ー文化」の「闇」ルートの問題に関わる研究の土台を作る作業をしたが、2013年度は、本報告書の「研究成果」や「今後の研究の推進方策」に示したように、2012年度の実績の上に、ロシアの問題を重ね合わせ、アメリカ、ロシア、中国、韓国、日本の研究者と議論しながら、共同研究の可能性について模索ができたのは大きな収穫であったと思う。大きな規模の研究交流とは異なるレベルで、明確なテーマを設定し、領域横断的な議論が行われ、英語・日本語・韓国語・中国語による出版企画に参加したり、学会誌に掲載されることによって、異なる文脈を生きる研究との対話の可能性を提示できたと思う。このような活動を通して作られたネットワークを媒介に、研究資料を集める作業も同時に行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
①資料を集める作業を続ける。とりわけ、1960年から80年代に起きた民主化運動に対する政治のレベルでの思想弾圧の再審が再開され、今も継続中であること、ベトナム戦争をめぐる新しい資料や証言が多くあらわれていることなどに注目する必要がある。今年度はそれらの資料をあつめる作業を開始したいと思っている。 ②昨年に引き続き、他の研究者との共同研究を続ける。民衆による文化運動に関する会議をシアトルのワシントン大学で行う予定である。7月26日にはワークショップ「沖縄「自立」の文化的再構成を問う」を企画する予定である。革命と東アジアの民衆運動に関するソウル大学人文科学研究院との共同研究の成果を7月11日に行われる国際会議で発表する予定である。また、ロシア出身のオスロ大学の教授V・Tikhonov氏らとの東アジアにおける革命と抵抗の表象に関する共同研究の成果を、6月21日にASCJでパネルの形式で発表する予定である。 ③研究成果を多言語で発表していく。7月末に、東アジアにおける情報統制に関する韓国と日本での同時出版企画に編者として参加する予定である。その他、共同研究関係者とともに、研究成果の公開にむけて議論を続ける予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2013年度の年度末である3月17日から24日まで韓国出張を行い、延世大学で開かれた国際会議(3月21日)への参加、資料の収集、成均館大学で出版の打ち合わせを行っている。その期間が年度末であったために、出張後請求を選択した 。このような事情により、次年度使用額が生じているが、すでに使用している。 上記の「理由」に記したように、すでに使用している。
|