帝国日本の解体以後、軍事独裁政権下にあった韓国の民主化運動に対し、日本の「文学―文化」が大きな関わりを持っていたことに注目した。とりわけ、禁じられた表現あるいは身体的な拘束をうけた人による表現がどのようなルートを媒介としながら移動し、拡散していたのかについて研究した。2014年度は、以下の三つの点に重点を置いて研究を進めた。①2012年度から続けてきた研究資料の構築(資料の調査・分析を含む)を行った。②韓国・アメリカ・ロシア・中国における文化運動・書物の移動・検閲をめぐる共同研究の基盤作りをした。ワシントン大学のE・Mack、韓国成均館大学の千政煥、大妻女子大学の五味渕典嗣らと、2014年10月にワシントン大学でワークショップを主宰した。次回は、2015年9月、東京開催を予定。日韓の検閲研究者と『検閲の帝国』(新曜社)を刊行した。2013年度から東アジアの革命と文化の流通について、ソウル大学日本研究所・オスロ大学のВладимир Тихоновとの共同研究を行っている。その成果を、2014年7月11日にソウル大学で発表した。日中研究者の共同研究の成果が中国の汪暉・王中忱編『區域』に掲載された。③国際ワークショップを企画・開催し、複数言語による領域横断的な成果の公表を試みた。2014年度は4回の公開ワークショップを行った。1回目:金元「朴正熙時代の韓国における大衆の記憶と忘却」、コメンテーター:木下ちがや・鳥羽耕史・中谷いずみ。2回目:「沖縄「自立」の文化的再構成を問う」という企画で、報告は林慶花・徳田匡・金誾愛、コメントは佐藤泉 戸邉秀明。3回目:報告はChelsea Szendi Schieder「ゲバルトローザ」、コメントは小田原琳。4回目:「「連帯」の分断、その記憶を如何に歴史化するか」という企画で、報告は趙基銀・Chris H. Park。
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