本年度は4月から12月にかけて計10回、15日の調査をおこなった。 本年度の調査に参加した研究協力者は、植田麦、柏原康人、坂口太郎、花川真子、森誠子、吉田唯の6名、調書のデータ入力担当者は中山智香子、久本里奈の2名。12月の調査終了時点で、文献資料は第105函の途中までの調査を終え、データ入力(棒目録)は104函まで完了した。なお、前年度までは作業効率を優先し、原則として(特に重要な資料と判断したものを除き)写真撮影はせずに調査カードをとっていたが、今年度は、カードの記述内容の当否を確認するためのメモ画像として最小限(冒頭・奥書等)の撮影をしながら進めることとした。 調査の進展にともない、他寺院で多くの典籍を書写・校合していた人物として、以前から注目していた高照・定照・智照の三人に加え、等空・恵月という人物も浮上してきた。宝珠院と交流のあった寺院も、新たにいくつか判明した。 また、仮番号を付しながら調査を進めている木箱と別置されている資料群のなかから、六種の縁起を紹介(うち四種を翻刻)した。これらは、すでに紹介されている『摂州西成郡大坂天満菅原山天満宮寺宝珠院略縁起』を相対化するものであるだけでなく、大坂天満宮との関わりについて考える際にヒントとなる記述もあり、非常に注目すべき資料である。 三年という研究期間では、すべて(120函)を調査することはできなかったものの、9割近くの調査を終え、それを棒目録とすることにより、宝珠院所蔵資料の概要(種類、時代、分量)はほぼ把握できたものと思われる。
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