研究課題/領域番号 |
24652059
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
竹内 勝徳 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (40253918)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | トールテール / 口述文化 / アメリカン・ルネサンス / メルヴィル / ホーソーン |
研究概要 |
本研究は、トールテールに代表されるアメリカの口述文化が内包するメッセージ伝達構造を、最新の科学的知見によって検証すると共に、それがアメリカン・ルネッサンス作家の作品にどのような形で反映し、テクスト構造にどのような変化を与えたのかを明らかにするものである。アメリカン・ルネッサンスの作家―エマソン、ソロー、ホーソーン、メルヴィル、ポー、ホイットマン―は、トールテールや説教、演説など同時代に流行したオーラル・メッセージングに強い影響を受けている。本研究は、そうした声の文化にみられる言語的特質を言語学的観点から分析し、それをアメリカン・ルネッサンス作家のテクストに読み取り、それが作家の想像力によってどう用いられ、どのように変化したかを調査する。 平成24年度は、口述文化の分析作業を行った。具体的にはアメリカのトールテールについて、発話者と聞き手の協働性、複数話者間の関係性、外部指示性、虚構承認の条件、地政学的特質の観点から分析を行った。研究成果としては、「(脱)トラヴェル・ライティングとしてのTypee」(日本英文学会第84回全国大会シンポジウム「旅と移動のアメリカ文学」、2012年 5月、専修大学生田キャンパス)において、トールテールの談話構造とトラヴェル・ライティングの関わりやメルヴィルの『タイピー』に読み取れる口述文化の特徴に焦点をあてた。「革命を呼び込む移民の行方ーチャールズ・クライツァーの言語理論と『緋文字』」(『ロマンスの迷宮』、英宝社、2013年3月)では、ホーソーンが注目した自然言語の口述的特質について考察を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トールテールの談話構造を分析するだけでなく、18世紀、19世紀の旅行記の様式を比較することで、大衆文化に浸透した様々なディスコースのあり方がみえてきた。また、そうすることで、植民地主義や資本主義の進展と口述文化の関わりが理解できた。結果として、これまで見落とされてきた19世紀の文学を見通す一貫したパラダイムがおぼろげながらもみえてきた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの調査結果を他のアメリカン・ルネッサンス作家のテクストと照らし合わせ、その言語的特質を明確化していく。例えば、『白鯨』や『草の葉』における “you”の指示位相( “Call me Ishmael”や “what I assume you shall assume”に代表される語りのあり方)がどのように変化しているのか、或いは、『ブライズデイル・ロマンス』における「ヴェールの貴婦人」の演技構造が、「虚構承認性」においてカヴァーデイルの語りとどのような相同性、異質性を展開しているのか、など大変興味深いものとなる。『信用詐欺師』には数えきれないほどの外部指示、言外の指示が存在し、極めて特徴的な空間性を表現しているが、このことについてこれまで全く研究されていない。以上のような観点から、口述文化分析のデータを用いて、一貫した言語学的パースペクティブの中で、アメリカン・ルネッサンス文学の特質を明らかにしていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
日本英文学会、日本アメリカ文学会、MLA年次大会などに参加する予定である。そのための旅費として支出する予定である。
|