研究実績の概要 |
平成26年度は最終年度であり、総括的な意味においての英文学研究における構造的な非歴史性を科学的知識の取り込みという点から検討したが、個々の詩人や作品との関連における考察においては、分析手法やアプローチの視点をさらに検討する必要があるという点も明らかになった。これは文学作品が「現在」読まれているところに成立する価値に照らして、その作品の歴史性をいかに回復させるかという点において、一般的な文学理論を越えた個々の作品ごとのアプローチが必要となるからである。本研究の一つの成果として、科学的言説にかかわる歴史的な再構築と文学における歴史主義的研究手法へのさらなる検討が必要であることが明らかになったといえる。 平成26年度には具体的に次の二点について研究を行った。1)植物についての科学的知識をいかに英文学研究に取り入れるかを考えた際、どのような問題点が発生するかという側面から、英文学研究の非歴史性への考察を行った。この考察は、「植物表象とイギリス近代文学―文学研究における歴史主義をめぐって―」と題して論文にまとめた。 また、2)平成25年度から引き続き検討している、批評史上重要なコールリッジの『文学的自叙伝』について、歴史的な科学上の理解が十分とは言えない現代の英文学研究のパラダイムの中では理解されにくいものである点について、出版史および受容史を踏まえて考察した。この内容については、国際学会で発表し(Coleridge's Biographia Literaria and Its Historic Readers, International Conference on Romanticism, Minneapolis)たが、今後論文としてまとめる予定である。
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