当初からの計画通り、アメリカのホフストラ大学モーリン・マーフィ教授(国際アイルランド文学研究協会元会長)を招聘した。情報・意見の交換を行い、特に参考文献だけでは理解しにくい微妙な部分を大いに助けられた。一緒に聖心会日本管区本部を訪問、管区長のシスター、新庄美重子氏から資料を見せて頂き、何点か事実確認も行った。1908年にアイルランド人2名を含むシスター4名がオーストラリアから来日、以降日本において聖心会を育み、定着させた霊性(spirituality)が強調されるとともに、実践力も目覚ましいものであったことが理解できた。 マーフィ教授が本学部授業として行った講演では、アメリカへ渡ったアイルランド人、とくに若い女性の運命とカトリック教会が果たした役割について語られた。若い女性の教育という観点からも考察があり、日本の場合との比較も一つのポイントであった。 在日アイルランド大使館における講演では、世界の食糧危機、社会正義などの問題を、日本の若い層がアイルランドの若い人々と心を合わせて行動するよう呼びかけが行われ、シスター・シーヒーの主張との共通性がみられた。ジョン・ニアリー大使からも意見を伺う機会を得て、往復を含めて1週間の滞在ながら、充実したプログラムで予定をこなされた。 夏季休暇中には、再びダブリンを訪問、女性学・女性史の権威でドミニコ会シスターのマーガレット・マックカーテン氏と面談、再び一緒に聖心会のマウント・アンヴィル中等・高等学校(元大統領のメアリ・ロビンソンも卒業)に隣接する聖心会本部を訪問、修道院長シスター・ブレイディに面会、シスター・シーヒーの渡日時の思い出等を伺った。 また、国立図書館マニュスクリプト部門への入室が許可され、ハナ・シーヒー・スケフィントンの資料、主として書簡を辿り、当時の社会状況やそれに対する考え方などを、日常生活を背景に理解することができた。
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