本研究は、女子の中・高等教育およびキャリア選択の機会が急速に広がった19世紀後半から20世紀前半にかけてのイギリスにおける少女像の大きな変化に注目し、「新しい少女」とは具体的にどのような存在であったのか、どのような価値観を反映していたのかを探るものである。軸となるのは、特に影響が大きかったと思われる女学校小説、少女雑誌、ガールガイド組織に関する分析である。これらの作業を通して、10代から20代前半の女性の活動領域拡大の背景を詳らかにし、現代の女子教育のありかたを再考するひとつの契機とすることが、本研究の目的である。 最終年度である平成25年度は、スカウト運動の歴史について調べ、ガールガイドがどのような経緯で誕生したのか、どのように運営され、どのように展開していったのか確認した。そして、ガールガイドの最初の手引書の内容を分析し、どのような少女を育成することを目標としていたのか考察した。また、少女小説や少女雑誌においてガールガイドはどのように表象され、ガールガイド文化がどのように普及していったのか探った。そして、平成24年度に調査・研究した女学校文化とガールガイド文化が新たな少女像の形成にどのように関わったかについて考察した。 その結果、この時期の女子教育と少女文化は少女を外=社会へと向かわせる志向を共有していることが分かった。この教育と文化における新たな動向がその後の少女たちのャリア形成にどのような影響を与えたのかは、今後の課題としたい。
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