最終年度の研究実績は以下のようにまとめられる。 日本フランス語フランス文学会春季大会(2014年5月25日)に於いて、ワークショップ「死者の記憶と共同体」を開催した。これは本研究の主題と密接に関連するものである。発表者は田中悟氏(神戸大学)と福島勲氏(北九州市立大学)と本研究の研究代表者である。田中氏が死者と共同体をめぐる理論的な議論を紹介したあと、福島氏は映画「ヒロシマ・モナムール」に於ける不在の死者をめぐる考察を行った。研究代表者は、対独レジスタンスの指導者ジャン・ムーランの遺灰がフランスの偉人たちの霊廟である「パンテオン」に入れられる際に、アンドレ・マルローが行った演説/演出を分析した。ワークショップの概要は学会から発行された『cahier』第14号に掲載されている。なお本ワークショップ発表者の田中氏に依頼し、北大文学研究科に於いて講演会(「死者人称論とは何か──会津と靖国、そして韓国の事例を通して──」7月4日)を開催した。 研究代表者は、カミュ研究会例会(12月20日)に於いて、「誰が誰に同意を求めるのか ── 『異邦人』最終章と翻訳の問題」という題目で研究発表を行った。その発表に基づく論文が雑誌『カミュ研究』第12号(2015年5月発刊予定)に掲載される。 マルローに関する文章を発表されている月村辰雄氏(東京大学)による講演会(「文学部の誕生」10月17日)を開催した。第三共和制期に成立する「文」学部とマルローの所謂「文化」概念との関係を考察する上で、興味深い講演であった。
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