研究課題/領域番号 |
24652070
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田辺 欧 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (60243276)
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研究分担者 |
藤井 美和 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20330392)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 北欧文学 / 死生学 / 子ども / デンマーク / スウェーデン |
研究概要 |
本研究「死生観の文学空間ー現代北欧児童文学における「死」の語り」は、現代北欧児童文学における「子どもの死の受容」に関する研究の実態を、現地の研究機関との連携のもとに、文学的研究手法と社会学的研究手法を融合させることで北欧地域の文化的・社会的実情に即した視点から多角的に検証し、これまで社会科学系領域で中心的に研究されてきた死生学教育というものを文学の領域に引き入れ、2つのディシプリンから「文学における死生学」を考察することにある。 平成24年度は本研究の初年度であったので、まず6月に研究分担者の藤井美和氏と今後3年間の研究計画を具体的に検討し、調査旅行の日程などの擦り合わせと必要な本の書籍の選定作業を行った。 9月には関西学院大学・聖和短期大学主催のRCCEC公開講座において、本研究と関連させた講演「現代北欧児童文学における「死」の語り」と題して、「現代において子どもに死を語ることの社会的意義をめぐる」議論が北欧ではディシプリンの領域を越えて活発に展開されている現状を伝え、同時に現時点で所有している北欧の「死」をテーマとした児童書、絵本を紹介した。 また11月下旬には研究協力者として本研究に参画してもらうことになったスウェーデン・リンシューピング大学のアンベッケン氏が別件で来日中であったため、そのアンベッケン氏を交えて3人で再びスウェーデンの調査計画について話し合いと調査方法についての意見交換を行った。 本年度の研究の締めくくりとして3月2日より9日までスウェーデンに赴き、現地の研究機関(スウェーデン児童文学研究所、Ersta lillagaarden : Ersta子どもホスピス)を訪問し、現地の研究者から情報の提供を受けると同時に共同研究の可能性を探って活発な意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画の2本柱(2回の研究会、スウェーデン現地における研究機関での調査)は計画通りに遂行することができた。当初はスウェーデンの現地における調査を8月から9月に実施する予定であったが、双方の調査日程が合わず、年度末にずれこんだが、11月下旬に現地における研究協力者と日本国内で予め調査方法の打ち合せなどができたため、3月の現地調査では予想以上の成果を得ることができた。 研究計画では現地の研究機関において専門知見の情報提供をうけ、意見交換を行うとしていたが、実際には情報提供、意見交換にとどまらず、今後の共同研究までを視野に入れた議論へと発展した。その意味においても研究計画は順調に遂行され、当初の計画よりいくぶん進展していると言えるだろう。 また一昨年度から実施されている関西学院大学・聖和短期大学における公開講演会「子どもに死を語る」に講師として招聘されたため、9月時点における研究成果を発表する機会が与えられたことも研究をより進展させる要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度、本研究2年目の研究推進の方策は、研究計画書に記載しているとおり、デンマークを現地調査対象地に設定し、デンマークの諸関連研究機関を訪問、実態調査と研究を進める予定である。研究計画書においては、現地調査機関をコペンハーゲンに限定せず、ユトランド半島の南にある子どもホスピスを訪問する予定にしていたが、実際に交付された研究費では、地域を複数に設定する調査は経費上、無理なことが予想される。そのため調査地域を首都コペンハーゲンとその近郊に変更する予定である。 現在のところはコペンハーゲン近郊にあるデンマーク児童文学研究所の図書館、コペンハーゲンにある国立病院の子ども病棟におけるターミナルケアと教育の実態調査、「死を子どもに語る」ことをテーマに本を書いている児童作家(コペンハーゲン在住)へのインタビュー、癌撲滅協会が発行している「子どもに死を伝える本」が教育現場でどのように用いられているかを調査し、現地でしか入手できない資料と書籍の収集を実際の研究目的として計画中である。 そのことについては6月に研究分担者の藤井美和氏とさらに検討する予定である。現地調査は8月末から9月上旬を予定している。 調査を終えた段階で秋にそのまとめと翌年(最終年度)の計画を練り、最終年度にはしかるべき学会および研究会で今回の成果を発表できるように、さらにこれを基盤として北欧諸機関との共同研究に繋げることができるよう、研究を押し進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が採択されたものの、予算をかなり減額されたため、平成25年度で使用できる研究費は概ね旅費(デンマーク現地における調査費と資料購入代:移動日を含め一週間)に消えることになると予想される。 昨年度は渡航費が比較的安い3月であったにもかかわらず、結局大幅な赤字となり、研究代表者、分担者ともに自費で足りない経費を捻出した。当初の研究費計画では最終年度に研究代表者のみ、最後の現地調査費としての旅費を計上していたが、まだ揃えなければならない参考資料、そして参考図書などがあるため、最終年度の研究費の一部を25年度に前倒しで使うことも視野に入れている。
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