研究課題/領域番号 |
24652070
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田辺 欧 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (60243276)
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研究分担者 |
藤井 美和 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20330392)
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キーワード | 北欧文学 / 死生学 / 子ども / デンマーク / スウェーデン |
研究概要 |
平成25年度は本研究の2年目にあたり、視察領域をデンマークに据え、8月31日より1週間の日程で調査を行った。「死」と向かい合う子どもへのケアをどのように実践しているかを探るために民間団体(ガン撲滅協会)および公共団体(デンマーク王立病院付属図書館)を 訪問し、悲嘆プログラム・プロジェクトリーダーや図書館専門司書と「子どもと悲嘆プログラム」についてディスカッションを交えた。また子どもに絵本を通して「死」を語る作家Kim Fupz Aakesonを訪問し、「子どもと死」をテーマに北欧人の死生観、社会の死の捉え方についてインタビューを行った。また、王立病院においては病院学校、院内学級、院内宗教施設、重症子どもの交流空間(カフェ)視察見学しデンマークにおける死生学教育の実態を探った。さらに児童書専門店にて絵本調査および、コペンハーゲン中央図書館 訪問、両研究分野で必要とする資料を収集。購入書籍の選抜を行った。 9月には共同研究者の藤井美和氏が関西学院大学・聖和短期大学主催のRCCEC公開講座にて本研究と関連させた招待講演「子どもと死」と題して、社会学見地からの報告を行った。 研究代表者である田辺は本年度の業績において、「デンマーク語で読む四季』というテキスト集を刊行したが、そのなかに、この科研のテーマである「子どもと死」を扱ったテキストを本書のなかに組み入れて考察を行った。 平成26年2月には研究会を開き、本年度の総括を行うと同時に最終年度に向けて講読すべき本や論文の選定、研究実績を発表できる機会の可能性について話し合いを持った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画(デンマーク現地における研究機関での調査)は、計画通りに遂行することができた。 デンマークにおける調査は、民間の機関、公共施設の訪問視察とディスカッション、児童作家へのインタビューを中心に進めた。それぞれの場において現地においてしか調達できない数多くの資料の提供を受けたこと、子どもを対象とした死生学教育に関わる現場の人々と意見を交わすことができたこと、実際に子どもに死を語ることをテーマに作品を創作している作家へのインタビューを遂行できたことは、本年度の大きな成果となった。 また昨年度は研究代表者である田辺が関西学院・聖和短期大学主催の公開講演会「子どもに死を語る」において、文学研究の視点から「現代北欧児童文学における「死」の語り」と題して講義を行ったのに引き続き、本年度は共同研究者である藤井美和氏が講師として招聘され、「子どもと死」について社会学見地から研究の成果を一般と研究者双方に向けてアウトプットすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年平成26年度は本研究の最終年度となる。これまでの2年間はスウェーデンとデンマークにおいて現地調査を中心に進め、その成果を田辺、藤井双方が講演会の中で発表する機会を得たが、同時に今後の共同研究に課題を残すことにもなった。まずはこれまで「子どもと死」という共通テーマに関わりながらも文学、それも北欧文学を専門に研究してきた田辺と、アメリカと日本を中心に社会学的見地から研究を遂行してきた藤井、両者には互いにとってまったく新たな研究領域に接したわけであり、新しい知見に触れ、互いに触発されながらも、互いの研究を今後いかに有効な手段で融合していくのかを現在模索中であり、3年間でこの研究を終結することはできない。北欧にはディシプリンを越えて共同研究を遂行し、それを論文、著書のなかで発表している事例があるので、その事例を参照に共同成果を何らかの場所で発表せねばならないと考えている。ただ日本においてはいまだディシプリンを越える統合研究を発表する場が非常に限られていることを再認識している状況である。 現在本研究を有効な形で公開するとすれば、学会や論文といった専門研究機関においてよりも、日本ではじめて子どものためのホスピスを立ち上げた国内の病院のプロジェクトチームに関わりを持ち、現場で子どもの死生学教育に携わる研究者、宗教学者、医療関係者と連携するなかで北欧を中心に据えた本研究の一端を発信することではないかと、共同研究者と話し合っている。また国内において子どもの死生学教育に携わっている諸機関に出向いて、北欧の事例を報告、紹介し、今後はさらに、心理学、宗教学、哲学などの分野と共同研究の土壌を築くことが、本萌芽研究の総括に相応しいのではないかと考え、最終年度の研究方策を立てる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた物品使用額にわずかながら達しなかったため 今年度の物品購入か国内旅費の補助に充てる予定である。
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