本研究「死生観の文学空間ー現代北欧児童文学における「死」の語り」は、現代北欧児童文学における「子どもの死の受容」に関する研究の実態を、現地の研究機関との連携のもとに、文学的研究手法と社会学的研究手法を融合させることで北欧地域の文化的・社会的実情に即した視点から多角的に検証し、これまでの社会科学系領域で中心的に研究されてきた死生学教育というものを文学の領域に引き入れ、2つのディシプリンから「文学における死生学」を考察することであった。 本年平成26年度は最終年度であり、先の2年間の研究、実態調査に基づいてまとめとなる研究成果を出すことに専心した。研究代表者である田辺は11月に北ヨーロッパ学会において「子どもに”死”をどう語るのかー現代北欧児童文学/文化からのアプローチ」と題する研究発表を行い、そのなかで共同研究者からこの2年間、死生学というディシプリンに基づく理論から学んだ知見を援用した文学分野での発表を行った。また共同研究者藤井は、この共同研究に直接関係する著書『輝く子どものいのち』の編者となり、そのなかにおいて「子どもの「死」の理解」と題する論考を発表し、同著において、田辺は「絵本をとおして”いのち”と”死”を子どもにつたえる」と題する小文を投稿した。双方の共同研究による共同成果である。また最終年度に互いの研究成果をどのような形でまとめるのかについて、情報を交換しつつ研究会を行った。 またこの科研に関連する著書、および論考をそれぞれのディシプリンに則した学術書、学術論文としても発表した。また科研の研究期間は過ぎていたが、2015年4月16日『輝く子どものいのち』の出版に合わせて開催された記念講演会「多職種による小児緩和ケアの原則」に出席し、子どもに「死」をつたえること、緩和ケアには多職種、つまりディシプリンを超えた研究が必要だということをあらためて相互確認した。
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