研究課題/領域番号 |
24652077
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
福満 正博 明治大学, 経営学部, 教授 (60165313)
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研究分担者 |
古屋 昭弘 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70165497)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 元明時期の出版 / 白兎記 / 金釵記 / 戯曲小説の文字学 / 目連戯 / 弋陽腔 / 青陽腔 / 儺戯 |
研究概要 |
○著書(共著):①『中国重慶陽戯(儺戯)国際学術研討会論文集』(中国戯劇出版社、2012年12月) ○論文:①「江西省の九江青陽腔白兎記(1)」(『明治大学教養論集』485号、2012年9月)、②「河北省武安市的賽戯(1)――≪大頭和尚≫与元雑劇」(『明治大学教養論集』488号、2013年1月)、③「河北省武安市的賽戯(2)―周憲王雑劇之中的慶祝劇与武安賽戯的≪擺八仙≫」(『明治大学教養論集』493号、2013年3月)、④江西省の九江青陽腔白兎記(2)(『人文科学論集』第59輯、2013年3月) ○国際学会発表:①「元雑劇与儺祭祀(河北省武安市賽戯)」:中国臨武儺文化国際学術研討会(2012年8月18日、中国湖南省郴州市臨武県)。②「周憲王雑劇之中的慶祝劇与武安賽戯中的≪擺八仙≫」:中原戯劇文化国際学術研討会(2012年11月3日、河南省開封市河南大学河南地方戯研究所) ○現地調査:①江蘇省南京市(期間:2012年8月20日~23日)、南京市の秦淮地区や、書店街のあった三山街を調査した。②安徽省黄山市祁門県目連戯調査(期間:2012年11月5日~10日)。11月6日:黄山学院の研究センターと祁門県文化局を表敬訪問。7日:歴渓村で目連戯を録画。8日:坑鎮馬山村で目連戯を録画。9日:目連戯の作者鄭之珍の墓を見学。また各地の祠堂・古戯台を見学。10日:坑鎮馬山村で老芸人から聞き取り。③安徽省池州市儺戯調調査(期間:2013年2月16日~27日)2月17日:市の文化局を、表敬訪問。18日: 岸門劉氏村で儀礼を調査。19日: 東山呉氏村で、儺戯の調査。20日:大和章村で現地の老芸人から聞き取り。21日:邱村柯地区で儺戯会という住民組織を調査。22日:源渓曹村で儀礼と儺戯の調査。23日:山湖村で儺戯の調査。24日:青山廟会を調査。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査として今まで私は主要な出版地である福建省の建陽市を調査していた。今回新たに、主要な出版地域である江蘇省の南京市を調査した。書店街として有名な三山街が秦淮地区という、科挙受験生と妓女の住む賑やかな繁華街の一角にあったことも現地を歩いて確認することができた。また、安徽省の出版地域である黄山市を訪れ、目連戯の作者鄭之珍の墓があり、且つ目連戯の出版地でもある祁門県も調査した。祁門県では、実際に地方の芸人による目連戯の上演も見せてもらい、戯曲の出版と現地の民間文化が深く関係している様子を調査した。 また地方文化・戯曲の研究としては、江西省九江市に残る青陽腔(本来は安徽省池州市青陽県に起源する)の一つである「白兎記」を取り上げ、現地で採取した油印本を翻字する作業をした。この地方戯曲は、前世期に採録された地方の戯曲であるが、明代初期の弋陽腔の形を十分に残している作品である。「白兎記」は、これ以外にも江蘇省の成化本「白兎記」や、福建省建陽の『風月錦嚢』に収められた「白兎記」もあり、安徽省の青陽腔の「白兎記」と比較することにより、地方文化と出版の関係について、さらに深い研究をする基礎を作った。「金釵記」については、以前その流伝について論文を書いた。この「金釵記」は、安徽省池州市では現在も正月の儺戯の演目として上演されている。今回安徽省池州市の調査では、この「金釵記」の上演を見、その脚本を収集することを目的に行った。現地では数種類の脚本(抄本)を手に入れることができた。これらを総合的に比較して、安徽省から福建省にかけての地方文化と戯曲の出版という問題の解明を進めていきたい。 文字学的方法による、字体の索引は、本年度中国における地方文化の流れ、現地文化と出版の関係などを解明する現地調査に主眼を置いたので、あまり進まなかった。これからこの方面の研究を進めるつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、さらに現地調査を進めるとともに、元代明代初期の戯曲小説の字体索引の作成に努める。まずは「成化説唱詞話」の中の「新編劉知遠白兎記」(成化本白兎記)を取り上げたい。これにより、福建省の出版になる明代初期の『風月錦嚢』中の白兎記、江蘇省南京の冨春堂本「白兎記」、今回採取した安徽省・江西省に現在伝わる弋陽腔・青陽腔の地方戯曲の脚本(抄本)と比較検討することも可能になる。また、早稲田大学の古屋昭弘先生と協力して、地方戯曲からうかがわれる地方文化・地方の方言についても研究を進めたい。 特に今年度は、研究協力者である中国芸術院戯曲研究所の所長である劉禎氏を日本に招待して、学術交流を企画したい。私の所属する明治大学でも東アジア文化研究所が新たにできたので、そこで講演などをしてもらい多くの日本の研究者と意見交換をしたい。また、明治大学以外の他の大学でも講演をしてもらえるように、交渉をするつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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