研究課題/領域番号 |
24652079
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西村 義樹 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20218209)
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研究分担者 |
木村 英樹 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20153207)
林 徹 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20173015)
唐沢 かおり 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50249348)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 言語データ / 言語的直感 / エリシテーション / 意味理解 / ダイクシス |
研究概要 |
構造化エリシテーションの手法を開発するための理論的検討と、そのための具体的データを集めるための実験をおこなった。まず理論的検討については、研究代表者と研究分担者全員が定期的に集まり、これまでの言語研究、特にフィールド言語学がおこなってきた、エリシテーションというデータ収集の方法を検討するとともに、海外での研究動向についても広くサーベイした。その結果、わずかではあるが、海外でも同様の問題意識が持たれ始められていることを確認した。 次に実験については、平成24年度は日本語の指示詞を対象に実験をおこなった。テーマとして指示詞を選んだのは、同定が容易な言語形式であるにもかかわらず、その機能・用法を説明することが、一般の話者にとってだけでなく、言語研究者にとっても、きわめて困難であると考えられるからである。24名(うち2名は日本語非母語話者)の参加を得て、対話者の配置(2名の実験参加者が向き合って座るか、あるいは、同じ方向を見て座るか)、指示対象が既知か否か、指示対象が固有の特徴を持っているか否か、などの条件が指示詞の分布にどのように影響するかを観察した。また、調査者の母語と調査対象言語とが同じ場合と異なる場合とでエリシテーションへの影響があるかないかを知るため、同様の実験をトルコ語と日本手話の母語話者を対象としても実施した。現在、録音・録画されたやりとりの書きおこし、およびアノテーション作業が進行中である。 なお、当初平成24年度に予定していた研究費の一部しか執行できなかった理由としては、すでに述べたように、海外でも同種の問題意識を持つ研究者がおり、その見解の確認に時間がかかったこと、および、実験のデザインと準備に想定以上の時間がかかったことがあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的における「旧来の言語学が提供してきた知見の妥当性の批判的検討」については、特にフィールド言語学と呼ばれる研究分野の調査報告を広くサーベイすることにより、言語研究者によるデータの解釈に依存した調査手法に、長所と短所のいずれもが存在することを確認した。また、同様の問題意識を持つ海外の研究にも注目し、本研究課題のテーマが世界の言語研究で共有されるものであることも確認した。以上、この領域については、順調に進展していると言える。 研究目的における「一般人の言語的直感に影響を及ぼす諸変数の効果の系統的な検討」については、実験によってその検討を開始した段階にある。ただし、実験結果を元に検討する予定であった「言語学者の直感に依拠した研究知見と一般人の言語的直感に依拠した実験結果とを対比」にまでは至ることができなかった。以上、この領域については、やや遅れていると言える。 以上をまとめると、研究目的にあげた内容に照らして見た場合、やや遅れていることを認めざるを得ない。その理由としては、研究代表者と分担者全員にとって未知のテーマであり、議論とサーベイに多くの時間を費やさざるを得なかったため、実験のデザインと準備に十分な時間を割くことができなかった点をあげることができる。
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今後の研究の推進方策 |
エリシテーションによる従来の研究手法の長所として、一般の母語話者の顕在的な言語意識だけでなく、潜在的な言語意識を捉えられる可能性があることが指摘できる。一方で、エリシテーションにより研究者が捉えた話者の潜在意識は検証することがむずかしく、また、言語表現の形式や分布における特徴を手がかりとした推論に依ることが多いため、このような潜在意識による用法の説明は、循環論に陥る危険性を常にはらんでいる。 一方社会心理学では、潜在的な態度を計測する客観的手法が開発されており、これを利用することで、母語話者の潜在的言語意識を、より客観的に知る手段への示唆が得られることが期待される。そこで、今後の方策として、エリシテーションによる言語データとエリシテーションによらない言語データを比較検討することに加え、潜在的な意識を客観的に把握する手法の言語研究への応用を試みる。 以上のような研究推進方策の変更により、当初予定していたヴォイス現象を対象とする実験等については当面保留し、構造化エリシテーションの適用の試行ケースとして、最終年度におこなうこととする。さらに、海外の研究動向を直接把握することに努めるとともに、海外の研究者との共同研究の可能性も模索したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の理論的検討、および、実験結果を総合して、構造化エリシテーションの輪郭を定め、ヴォイス現象を対象として、その有効性と限界とを検証する。そのための実験とアンケートをおこなう計画であるので、実験に関連する機器や資材などの購入のための物品費、および、実験やアンケートの参加者に支払うための謝金を使用する予定である。 また、日本国内において本研究課題と同様の問題意識を持つ研究者はまだ多くなく、当初予定していたワークショップを国内で開催することは、やや時期尚早であるように感じられる。今後の展開次第ではあるが、積極的に海外の学会やシンポジウムで研究成果を発表するほうが、研究を進展させるためには効果的であると考えられるので、本年度その準備を進め、次年度はそのための海外旅費を使用する計画である。
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