研究課題
本研究課題は、日本語の終助詞の感受性に個人の対人調整能力が影響するか否かを検討するものである。母語話者に終助詞を含む対話を聴かせ、脳波の中で特定の出来事に付随して生じる事象関連電位(Event-Related Potentials: ERP)を測定し、その成分と対人調整能力との関連を検討する計画とした。話し手と聞き手の対人関係の調整に関終助詞の理解にあたって、聞き手は他者の心的状態を適切に推察しようと努める「心の理論(theory of mind; Baron-Cohen, 1995等)」の能力が求められると考えられる。「ね」の特殊な用法に対する個人の柔軟性が心の理論の能力によって説明できるという予測について、脳波に由来する事象関連電位(Event-related potentials: ERPs)を援用した2回の実験を通して探索的に検証した。得られたデータを分析した結果、心の理論の能力が低いほど、適切性の低い「ね」の用法に対して、脳の後部により強いN170成分 (刺激呈示後160~220ミリ秒の間の陰性成分) が認められた。N170は、しばしば顔認知課題から検出される社会的相互作用を反映する成分と考えられており、自閉症児に強く現れることでも知られている (Coffman, et al., 2013等)。本研究の2つのERP実験で一貫して得られたN170からは、心の理論の能力が不十分であると、終助詞の用法を固定的に捉えているため、特殊な用法に強い違和感を生じることになるという解釈が導かれる。反対に、心の理論の能力が高いと、特殊な「ね」であってもそこに付与された話し手の心的態度を柔軟に把握しようと努めるので、即時的な違和感は強くないのかもしれない。
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