研究課題
本研究は、言語習得における文法機能の発達の神経基盤を探るための脳機能計測法の開発を目的とした。具体的には、文法の中核である「併合」操作を取り上げ、多電極脳波・事象関連電位 (64ch ERP)で計測する実験デザインを開発し、大人を対象とした行動・脳機能計測実験を行い、脳データの時空間解析を行った。研究対象項目は、日本語他動詞文での格助詞の間違いによる句構造規則違反文とした。名詞の主格と目的格の配列が正しい通常文4文タイプ、非文4文タイプ、合計8文タイプ、さらに、意味要因の介入を排除するために格助詞配列は通常文と同じだが、名詞が意味のない音列からなるジャバヲック文8文タイプの合計16文タイプを用いた。予備解析の結果、通常の標準語順文で格助詞違反のある名詞句では、正しい名詞句に比べて欧米言語の句構造規則違反文や一致違反文で見られる早い陰性成分ELANは出現せず、それより遅い300ミリ秒から500ミリ秒にかけての陰性波が現れた。この陰性波は先行研究及び後頭部優位の頭皮上分布を踏まえるとN400と推測される。一方、ジャバヲック文ではN400は出現せず、刺激提示後160ミリ秒から210ミリ秒の潜時帯で早期前方陰性波が観察された。この陰性波は潜時帯及び頭皮上分布からELANに類似している。通常文とジャバヲック文の違いは名詞句の意味の有無であることを考慮すると、前者は意味役割違反の処理、後者は構造格の違反に対する処理が行われたものと考えられる。今回開発した実験方法は、今後、子供を対象とした文法機能の発達的変化を捉える研究に役立つことが期待される。
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Frontiers in Psychology
巻: 4 (735) ページ: 1, 7
10.3389/fpsyg.2013.00735