研究課題/領域番号 |
24652087
|
研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
天野 成昭 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 教授 (90396119)
|
研究分担者 |
牧 勝弘 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 准教授 (50447033)
榊原 健一 北海道医療大学, 心理科学部, 准教授 (80396168)
山川 仁子 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 助教 (80455196)
|
キーワード | 音声 / 知覚 / 生成 / 範疇境界 / 音韻 |
研究概要 |
平成25年度は音声生成の調音運動計測実験および録音実験に重点を置き,そのデータ取得と解析を精力的に進めた。 音声生成の調音運動計測実験では,語頭に摩擦音/s/と破擦音/ts/を含む単語をキャリア文の文頭に入れて実験参加者に発声させ,そのときの喉頭の動態を,経鼻的に挿入した軟性ファイバスコープで高速度撮像した。また同時に,光電式声門図(PGG)および電気式声門図(EGG)で声帯の開閉動態を記録するとともに,発声された音声をデジタル録音した。これらの記録データを用いて声帯が開大となる時間および閉小となる時間を推定した。その結果,摩擦音/s/でも破擦音/ts/でも子音の開始に先行して声帯の閉小が開始するという従来の知見と一致する結果が得られた。また,声帯が開大となる時間および閉小となる時間と,発声器官の時間的制御に影響を及ぼすと予想される発声速度との関係を解析したところ,予想に反して,声帯が開大となる時間および閉小となる時間と発声速度の間には一貫した有意な相関が見られなかった。すなわち,摩擦音/s/と破擦音/ts/の発声においては,発声速度にかかわらず,声帯がほぼ一定の動きをしていることが明らかになった。これは発声速度が,声帯以外の舌・顎・唇等の調音器官の動きと強い関連を持っていることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
音声生成の調音運動計測実験と録音実験を実施し,得られた研究成果を日本音響学会で発表することができた。しかし,発声速度との関係を見る計画であった音声知覚実験は,予備的検討にとどまり,計画よりもやや遅れが生じた。これらを総合すると,全体としては研究がやや遅れているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究プロジェクトの最終年度であるので,音声生成実験,調音運動計測,聴覚神経回路モデルシミュレーション,音声知覚実験の各研究項目における個別の解析をさらに進めるとともに,研究項目間の関係解析を行い,その結果を基に,総合的分析および全体的考察・検討を集中的に行う。特に4つの研究項目における個別データを統合したデータから導かれる「言葉の鎖」の全体における情報の流れと,各段階の情報処理の相互依存関係に基づいて,音声知覚と音声生成の対応関係の解明に繋がる知見を得ることを目指す。本プロジェクトにおける一連の研究で明らかになった内容を国内外の学術会議で発表するとともに,研究論文を執筆し学術誌への投稿を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
音声知覚実験に使用する刺激について,自然性を保ちつつ刺激連続体を作成するための最適なパラメータ設定に予想よりも時間が多くかかり,平成25年度に予定していた本実験の実施が困難となったため,本来,その実験に充てるべき予算の一部を平成26年度に繰り越すことになった。 繰り越した助成金は,平成26年度における音声知覚実験の実施に必要となる機材,実験参加者への謝金,実験用の消耗品等に充てるとともに,研究発表に必要となる参加費・旅費等に充てる計画である。
|