研究課題/領域番号 |
24652091
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 健三 信州大学, 人文学部, 教授 (00221656)
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キーワード | 平仮名 / 万葉仮名 / 上代仮名 / 平安時代の仮名システム / 書記システム |
研究概要 |
今年度平成25年度は、次の2つの研究の柱・実績をなした。1)昨年度までに収集した仮名関連資料の分析:資料調査に基づいたデータ整理をしている。具体的には3つの資料(上杉家文書「いろは手本」、「葛原勾当日記」、慶長二年写「狭衣の中将」(慶応義塾図書館蔵))について、併行して行っている。データ整理と分析に時間を要しているため、まだ公表できる段階にはないが、来年度(26年度)の成果報告を期して作業をすすめている。これらの分析は、「いろは手本」の歴史的意味や、連綿仮名書記システムが稼働している時期における「平仮名」活字の存在意義、などの一端を明らかにすることにつながることが期待できる。2)これまでの研究結果を踏まえながら、それらを整理し、より明確な分析結果を論文として発表した。(山田健三「仮名をめぐる歴史上の書記用語・再考」『日本語学』32-11)この論文は、これまで山田が行ってきた「仮名」に関わる歴史的用語の再検討結果を整理したもので、当該研究計画の中間報告的意味を有するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ整理と分析にいささか時間を要しており、今年度中の成果報告は叶わなかった部分があるが、これまでの研究の中間報告的整理ができ、今後の「平仮名」の意味変容を考えるための基礎的な状況整理は進んだ。したがって、現在までの達成度としては、概ね順調に進展しているという評価が妥当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平安期文献に基づき考察した「平仮名」の実態と、内的再建により推定した「平仮名」の本義から、平安期の「平仮名」の意味はほ復元できたと考えるが、中世以降「平仮名」の意味がどのように変容していったかを、いくつかの文献資料を扱うことで解明していく予定である。より具体的には、中世関連では、上杉家文書「いろは手本」の分析によって「いろは」そのものの歴史的役割を考える必要性を考える契機としたい。また、そのことと関連して、いろは仮名が簡単な仮名セットと理解されるべきものではないことを、慶長二年写「狭衣の中将」(慶応義塾図書館蔵)のフリガナ分析によって示すことができるとみている。また、幕末期から明治にかけての資料「葛原勾当日記」から、平仮名活字字体が、当時のあるべき仮名スタイルとの関係を論じていく契機としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主な使途は、書籍費用(日本語学・言語学・歴史学関係)と旅費(調査旅費・学会参加旅費)であるが、研究の直接の資料となる和古書なども、機会に応じて購入している。これらは古書であるため、購入機会も価格も予見できない場合が多く、当初計画よりも安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。 若干の残額(1,415円)が生じたが、来年度予算と併せて、主に書籍代・調査旅費代として使用する。
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