研究課題/領域番号 |
24652098
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
牲川 波都季 秋田大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30339733)
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研究分担者 |
市嶋 典子 秋田大学, 学内共同利用施設等, 講師 (90530585)
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キーワード | 異質性対応方略 / 複言語・複文化主義 / グリーン・ツーリズム / 調整行動 / 秋田県仙北市西木町 / 外国語能力 |
研究概要 |
2012年度にはまず,牲川「誰が複言語・複文化能力をもつのか」において,複言語・複文化能力概念を批判的に検討した。複言語・複文化主義は,言語・文化的資源を相互に用いながら,ともに生きることのできる共生的市民性を養うことをめざしている。しかし,複言語・複文化能力を育むといった場合,実質的には,複数の国民国家の言語・文化,すなわち複数の外国語の運用能力と複数の外国文化の経験をもつことを目標としている。上記論考では,こうした目標の持つ実行性上および思想上の問題を指摘した。 その上で,特別な外国語教育や外国文化経験をもたないにもかかわらず,参加者の満足感が非常に高い,留学生用農業体験プログラムを実施している事例に着目し,二つの調査を実施した。秋田県仙北市西木町のグリーン・ツーリズム(GT)運営農家の事例であり,2012年度には一つ目の調査としてインタビューを実施し,農業体験受け入れで起こった問題と解決方略をまとめた(牲川『農家に学ぶ留学生受入の思想と方法―秋田県仙北市西木町のグリーン・ツーリズム事例集』)。 また2012年度秋より,二つ目の調査として,研究分担者・市嶋典子が中心となり,留学生用農業体験プログラムの参与観察と会話分析,フォローアップ・インタビュー調査を行い,2013年度に考察結果を発表した(市嶋・牲川「接触場面におけるカテゴリー生成と変化のプロセス―母語話者と非母語話者の調整行動に注目して」(口頭発表),市嶋「農業従事者と留学生の接触場面に関する一考察―農業体験活動における調整行動に注目して」)。その結果,媒介言語の運用能力が乏しくとも,農家と留学生は,互恵的な知の交流を成立させるべく,多様な相互調整行動を行っていたことがわかった。この背景にはGT運営農家の,農業・農業体験に対する考え方,人間観・コミュニケーション観等があると予想され,今後はその解明が課題となる。
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