研究課題/領域番号 |
24652103
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山 悟 九州大学, 留学生センター, 准教授 (50284576)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 大学教育 / CBI |
研究概要 |
本研究は、学士課程国際コースの学生が全学教育の言語文化科目として日本語を学習する1年前期から2年前期までの1年半を「観察(ステージI)」、「発見(ステージII)」、「創造(ステージIII)」の3つのステージに分け、毎学期それぞれの段階に応じたテーマを与えて、インタビュー活動を中心としたグループ単位の自主研究を行わせることで、九州大学が掲げる「グローバルな異文化理解と豊かな国際的感覚、国際的教養を育む」という全学教育(言語文化科目)の教育目標を達成しようとするものである。 【平成24年度前期】 当初の計画に従い、前年度後期に実施したパイロット・スタディーの成果と反省点について、他の日本語授業担当教員とともに振り返りを行い、その内容の一部を論文にまとめた(小山悟・菊池富美子(2010)「学士課程国際コースの日本語教育ー大学の日本語教育はどうあるべきかー」『留学交流』Vol.19 10月号)。また、研究テーマを同じくする岡山大学の森岡明美氏、名古屋外国語大学の近藤有美氏、長崎外国語大学の川崎加奈子氏と共に日本語教育学会の国際大会でパネルを組み、本研究のテーマである内容を基盤とした日本語教授法(CBI)可能性と重要性について論じた。 【平成24年度後期】 国際コース3期生を対象に第1次本調査(ステージI)として「100人インタビュー」と称する学外活動を実施した。学生たちにはスマートフォンに搭載されたボイスメモ機能を使い(所有していない学生には科研費で購入したICレコーダーを貸与)、インタビューの様子を録音してもらった(当事者の許可を得られた場合のみ)。調査は予定通り終了し、文字化作業もほぼ完了。現在は収集したデータの分析を行っている。また、3月には前述の川崎加奈子氏と明日香日本語学校の教員4人を福岡に招き、合同の勉強会も開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書で述べた調査は全て期間内に終了し、データの入力作業も当初の計画通りほぼ終了している。ここまではほぼ予定通りと言える。問題は、現在行っているデータの分析が今後順調に進むかである。
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今後の研究の推進方策 |
【前期】国際コース3期生を対象とした第一次本調査(ステージII)を実施する。日本に来て半年が経ち、身の回りの物や出来事をようやく落ち着いて観察できるようになった(と思われる)今学期は、「発見」をテーマに以下の2つの学外活動を行い、先学期と同様、インタビュー・データの分析によって日本語の習得状況を、振り返りシートの分析によって各自のテーマに対する理解の深まり具合(+個々の成長)を検証する。 ①新聞作り:グループ単位でテーマを決め、インタビュー取材を行い、その結果を記事としてまとめさせる。 ②小学校訪問:先学期、日本事情教育の一環として訪問した玄洋小学校を再度訪問。前回の訪問で気になった点や今回新たに疑問に感じた点などについて児童や教員に質問し、上記新聞の記事としてまとめる。 【後期】3期生を対象とした第一次本調査(ステージIII)と4期生を対象とした第二次本調査(ステージIV)を行う。3期生については、これまでグループ単位で行ってきた学外活動を個人単位に変更し、1人でじっくりと考えさせ、独自の「日本○○論」としてまとめさせる。そして、ステージIからステージIIIまでの振り返りを比較・分析し、1年半にわたる教育実践の成果を検証する。一方、4期生については前年同時期の学外活動の成果を検証・評価した上で、再度「観察」を目的とした学外活動を行う。そして、その成果を3期生と比較し、本研究のテーマである「学士課程国際コース所属の留学生を対象とした内容重視の日本語教育プロ グラムの開発」に着手する。また、CBIという新たなアプローチは(応募書類の「研究の斬新性」でも触れたように)短期留学で日本に来た学生や、諸外国で日本語・日本文化を専攻している学生たちの教育にも有効であると考えられるため、今後はそれらの学生を対象とした授業にも取り入れ、実践の成果を検証していくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画ではICレコーダーを3台追加購入する予定であったが、ほとんどの学生がスマートフォンを持っており、それに搭載されたボイスメモ機能を使えば、(音声が若干不明瞭ではあるが)インタビューの模様を録音することは可能なので、(第4期の入学者が大幅に増えない限り)追加購入はしなくてよさそうである。よって、その分の経費を、国内外での研究成果の発表や国際コース以外での教育実践(本学の短期留学生対象の日本語授業や国外での実験授業)の経費として活用していく。
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