研究課題/領域番号 |
24652108
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平田 裕 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (00340753)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 筆記テスト形式 / 会話時との比較 / 脳活動 / fNIRS / 脳イメージング |
研究概要 |
3年計画のプロジェクトの1年目として、筆記テスト時と会話時の脳活動の全体像・傾向を把握することを目的とし、7人の被験者に対しfNIRSを使った実験を行い、(1) マッピング解析(fNIRS機FOIRE-3000使用)、(2) GLM統計(FOIRE-3000)、(3) 賦活度順位評価(Excel)という3つの分析を行った。今回の実験では、実際の筆記テスト状況、そして会話状況における脳活動は、きわめて複雑、かつ個人差も大きいということが明らかになった。 より具体的には、以下の知見が得られた。[1]実験のタスクは、大きく分けると、選択穴埋め問題、訳問題、選択肢問題、会話方式問題、そして会話の5タイプであったが、筆記テストの形式としては同形式でも、問題の内容によって脳賦活の部位と賦活の程度は異なる。[2]同様に、3つの会話タスクでも被験者の日本語レベルと話す内容によって、脳の活性化は異なったパターンを示した。[3]今回のタスクデザインでは、ブローカー野があると考えられる部位近辺だけが顕著に賦活、または、明らかにブローカー野近辺が主で他は従というような賦活パターンを示したケースは、全体の中では比較的少なかった。[4]賦活部位が特徴的に中央に寄るタスクと、左脳右脳両側に分かれるタスクが観察された。 今回の実験では研究テーマの複雑さがより具体的に明らかになったと言える。それに伴い、今後の課題を具体的にまとめることができた。タスクが長くなると疲労などの要素も入ってくる。その実際のテスト時の脳活動が研究のテーマであるが、どのように単純化とのバランスを取るかが重要であることが再確認できた。被験者の属性を揃えて人数を増やすのも1つの方向性だが、筆記テストの形式別の脳活動比較という目的のためには、同じ被験者に様々なデザインのタスクで実験を行った方が個人差の要因を少なくできるとも考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年計画のプロジェクトは、日本語学習者の脳活動が各種筆記テスト時と日本語での会話時でどのように質的・量的に違うのか明らかにすることを最終的な研究目的としている。研究計画を立てる段階では、それぞれのタスク毎に脳活動はある程度明確な賦活パターンを示すであろうという予測・期待があり、2年目、3年目はそれを元に発展的な研究も視野に入れていた。しかし、今回の実験では実際の筆記テスト時の脳活動がかなり複雑である、つまり、研究テーマの複雑さがより具体的に明らかになった。全体の進捗としては「やや遅れている」という自己評価になるが、研究全体としては具体的で着実な前進・深化を示している。実験目的を細分化し、それに合わせてタスクデザインと実験スケジュールを組むことができれば理想的だが、現実的にはfNIRS機のレンタルと被験者集めが大きな支配要因となる(fNIRSのレンタルは1年に数日から1週間程度)。貴重な実験の機会を活かせるよう、1年目でまとめた課題を反映し、2年目の研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
被験者の属性を揃えて人数を増やすのも1つの方向性だが、筆記テストの形式別の脳活動比較という目的のためには、同じ被験者に様々なデザインのタスクで実験を行った方が個人差の要因を少なくできるとも考えられる。今回はそれぞれの被験者で1回のみの実験であったが、同じ被験者に対し数日に渡って複数回の実験を行うことも考えたい。今回の実験と同じタスク、同様の属性の被験者での追実験も有用である。今回は脳実験のデータのみを分析したが、筆記テストタスクや会話を行った際の内省データも有用な情報になる可能性がある。 分析方法については、今回は脳活動の傾向把握を目的とした3つの方法を取ったが、今後は観察結果を裏付け一般化につながる分析方法を考えなくてはならない。本稿の総論的な結論としては、今回の実験結果は特定のパターンや類似性を強く示唆するものではないと述べたが、類似性や特定のパターンを示唆するものもあった。より客観的な検証を行うために、今後、統計解析も導入したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
脳イメージング機器fNIRSのレンタル費 50万円 被験者への謝礼 5万円 アルバイト謝金 5万円 資料・ハードディスクなど雑費 5万円 旅費 10万
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