研究課題/領域番号 |
24652108
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平田 裕 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (00340753)
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キーワード | 筆記テスト時と会話時の脳活動の比較 / fNIRS / 脳イメージング / 脳賦活度 |
研究概要 |
3年計画のプロジェクトの2年目にあたる2013年度は、初級学習者2名、中上級学習者9名を対象にfNIRSを使った実験を行った。今回は、前年度明らかになった課題に対応するため、実験デザインを以下のように変更した。まず、[1] fNIRSでの測定部位を変え、ウィルニッケ野を含めた。次に、[2]タスク毎の特性を把握しやすいように同種類のタスクを繰り返す回数を増やした。初級の2名については個人内比較を主目的とし、5種類のタスクを2日間に分けて実施した。中上級の9名については、3種類のタスクを1回の実験としてデータ収集を行った。 分析は、初級2名のデータ対し、トレンドグラフによる傾向把握と、対象チャンネルをブローカー野近辺、および、ウィルニッケ野近辺の2チャンネルに限定した形で統計分析を行った。中上級9名のデータ分析は未着手である。今後、チャンネル毎の積算値での検証、前頭前野データの検証、右脳と左脳という切り口での検証などを進める。 2013年度の研究、データ分析では以下のような知見が得られた。トレンドグラフによる傾向把握では、[1] 筆記テスト時と実際の会話時では脳の賦活度という点で大きな相違があると考えられる。[2] 脳賦活度は実際の会話との近似性を反映し、[選択/選択パズル] < [訳/会話式] < [会話]の順に大きくなっていると考えられる。[3] 個人差に着目して言語習熟度との関係を更に調べないといけないが、筆記タスクは右脳優位で処理される可能性が示唆された。また、統計分析では、[1] ブローカー野における賦活度で「選択パズル vs. 訳」、「訳 vs. 会話式」、「選択パズル vs. 日本語会話」が近似性を示すという結果になった。但し、2名の実験協力者では違いがあるので、タスクの属性として一般化できる結果とは言えない。個人内データでの検証を増やす必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度同様、13年度の実験と分析でも「筆記テスト時と日本語での会話時の脳活動の近似性・相違性」という研究テーマの複雑さ、脳活動の複雑さがより具体的に明らかになったと言える。進捗評価としては「やや遅れている」としているが、個人差、筆記テストの種類による違いなど、具体的な課題が明確になり、それに対応するように実験デザインも調整している。進捗の大きな支配要因としては、1回の実験時間(1人1時間)、fNIRS機レンタル期間、実験協力者集め、データ分析時間などの物理的な要因を挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、13年度に行った分析の続きとして、初級学習者対象のチャンネル毎の積算値での検証、前頭前野データの検証、右脳と左脳という切り口での検証などを、直近の課題として行いたい。また、中上級学習者も、初級学習者同様の分析を行い、習熟度による違いを検証する。 研究方法の検討、分析方法の検討という点では、[1] 分析対象チャンネルの選別方法(測定部位の検討も含む)、[2] 同種内での分析対象タスクの選別方法、[4] データの取り扱い方法(特定のチャンネル単独値か複数チャンネル平均値か、同種の複数タスクの平均か合算か、また、分析対象時間(データ数)をどうするか)などが継続的検討課題として挙げられる。これまでの研究で明らかになったこれらの課題を踏まえ、更に研究デザインを検討し、「筆記テスト時と日本語での会話時の脳活動の近似性・相違性」という複雑な研究テーマにアプローチしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会での発表が大阪であったため、出張旅費が少額で済んだ。 繰り越し分は海外での学会発表の費用に充てる。予算全体としては、脳イメージング機器fNIRSレンタル費50万、実験協力者への謝金5万、アルバイト謝金3万、旅費15万(海外での学会発表)、資料・ハードディスクなど雑費3万。
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