3年計画のプロジェクトの最終年度にあたる2014年度は、日本語学習者のべ18名を対象にfNIRSを使った実験(脳イメージングのデータ収集)を行った。測定部位は基本的に2013年度を踏襲し、ウィルニッケ野近辺を含め39チャンネルとした。2013年度の実験では全ての筆記テストの種類をカバーするためには実験を2日に分けなくてはいけなかったが、2014年度の実験では繰り返し回数の調整を行い、1日で全ての種類のタスクをカバーできるようにした。初級後半2名および中上級の2名に対しては、トレンドグラフによる傾向把握、賦活量比較、そしてブローカー野とウィルニッケ野の2つでタスク間の分散分析を行った。また、初級後半の別の1名に関しては、14チャンネルの測定データで相関分析を試行した。 2014年度の研究、データ分析では以下のような知見が得られた。[1] 全般的に、中級学習者は筆記テスト時よりも会話時の脳賦活総量が大きい。[2] 初級学習者は筆記テストと会話タスクが同程度の脳賦活総量を示すものがある。[3] トレンドグラフによるデータの検証では、初級学習者・中上級学習者とも会話時は脳活動が活発であるのに対し、筆記テスト時の脳賦活度はあまり高くない。[4] 中上級学習者の場合、会話時は左脳右脳の賦活量は同程度であるが、筆記テスト時は左脳優位であった。[5] 酸化ヘモグロビンの方は全て正の相関であるのに対し、脱酸化ヘモグロビンの方は負の相関を示すチャンネルが多い。[6] 母語会話と日本語会話を比べた場合が高い相関のチャンネルが一番多い。 fNIRSで得られるデータを統計ソフトで分析するためには、データの事前処理に膨大な時間がかかる。今後、チャンネル毎の積算値での検証、前頭前野データの検証、右脳と左脳という切り口での検証、相関分析の適用などを進める。
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