研究課題/領域番号 |
24652109
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
村田 晶子 法政大学, 国際戦略機構, 准教授 (60520905)
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研究分担者 |
毛利 貴美 関西大学, 国際部, 講師 (60623981)
古川 智樹 関西大学, 国際部, 講師 (60614617)
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キーワード | 留学生教育 / ICT / 教室外の学び / ネットワーキング / 高度外国人材 / 学習生活支援 / ピアサポート / eポートフォリオ |
研究概要 |
本研究は、留学生のICT利用実態と人的ネットワーキングを調査するもので、日本の高等教育機関で学ぶ留学生の生活空間でのICTを利用した学び、人的ネットワーキングを分析し、その教育的な意義を明らかにするものである。本研究の成果は、留学生教育・留学生支援におけるICT の活用方法、そして留学生に関わる教育機関のICTの環境整備を考える上で役立つものであり、留学生の日本定着支援のための環境整備にも寄与するもので、その教育的、社会的な意義は大きい。 研究の初年である平成24年度は、まず留学生の生活環境におけるICT使用実態を明らかにするために、留学生の大学学生寮での生活場面の録画データの収集、分析を行い、留学生のICT利用に関連したデータを抽出し、分析を行った。平成25年度は、平成24年度に確立したデータ収集、分析方法を踏まえ、ICT利用に関する録画データの継続的な収集、分析を行い、留学生のICTを用いた学びの過程を明らかにした。さらに留学生のSNSを用いたネットワーキングに焦点をあてた調査を行い、留学生のSNSの通信データと半構造化インタビュー・データの分析を通じ、留学生のSNSコミュニティーへの参加が可能にするトランスナショナルな相互支援の実態を分析した。また、平成25年度は分析の枠組みを広げ、留学生の教室内と教室外の学習を結びつけたICT利用に関しても調査を行い、渡日前教育におけるオンライン学習の分析(LMSデータ分析)を通じ、来日前の学習者のICTを活用した事前学習の可能性を明らかにした。平成25年度のこれらの調査結果は、留学生のオンラインの人的ネットワーキング、そして学びの過程を明らかにする上で貴重な視点を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、留学生の教室外でのICTの利用実態、そしてICTを用いた人的ネットワークの広がりを明らかにすることにある。本研究の研究実施期間3年間のうち、平成24年度、25年度の2年間の調査により当初計画していたデータの収集がおおむね終了しており研究の進捗状況は順調であると言える。 平成25年度に行った調査として、前年度より継続して行っている生活空間におけるICT使用実態調査に加え、より焦点化された調査として、留学生のSNSの使用実態とオンラインネットワーキングに関するデータ収集と分析を行った。分析では留学生のSNSの通信記録と半構造化インタビュー・データを用い、オンライン空間における留学生同士の相互支援、家族からの支援などについて分析し、高度人材としての留学生の日本での生活支援としてSNSが果たす役割を明らかにした。平成25年度はこのほかにも、渡日前教育の留学生のオンライン学習の利用実態を分析し、来日前の学習者が教室外でどのようにICTを利用して学んでいるのかを明らかにした。 平成25年度はこれらの調査を行うことで、多角的なICTの利用実態に関するデータの収集、分析を行うことができたため、調査はおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究の最終年度として、過去2年間の研究で収集したデータの総合的な分析を行う。最終年度の前半でデータ分析を終了し、追調査が必要な場合は関係者の補足インタビューなどを行い、全てのデータ収集・分析を最終年度前半に完了する予定である。 分析においては、留学生のICTを利用した学びとネットワーキングの接点としてSNSの利用実態(録画データ)、留学生のSNS通信記録の分析、そして留学生のインタビュー・データを連動させた総合的な分析を行う。これまでの分析から、調査対象である留学生達にとって、ICTを通じた学習とネットワーキングが日本滞在期間で直面する困難を乗り越える上で大きな役割を果たしていることが明らかになった。この分析結果に基づき、最終年度の分析では、留学生が日本留学時期に抱える悩みや不安を、オンライン通信を通じてどのように友人、家族と共有し、オンラインコミュニティー上で支援を受けたり、相互学習を行ったりしているのかに焦点を当て分析を行う。中心となる分析項目は次の5点である。1)留学生同士のSNSを通じたピア・サポートネットワーク分析、2)留学生と家族との通信記録の分析を通じたトランスナショナルな留学生の支援ネットワーク分析、3)日本人学生とのSNSの通信記録の分析を通じたオンライン、オフラインの相互支援とピア・ラーニングの分析、 4)留学生のFacebookの通信記録の分析を通じたSNSコミュニティーの実態分析とその可能性、5)留学生のICTを使用した学習リソースの収集方法の分析などである。 最終年度の後半は、こうした分析を行い、研究成果を公表するために、著書の執筆、研究結果の学会発表、論文発表を積極的に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の観察録画・録音データの文字起こしは、分析の一環として研究チームのメンバーが行ったため、予定していたよりも外部に委託する文字化の費用がかからなかった。 次年度使用額は成果の公表(学会・論文発表、著書出版の関連費用など)のために使用する計画である。
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