研究課題
韻律を系統的に変化させた合成音声の聴取により、発音誤りに対する母語話者の許容度を明確にするとともに、非母語話者音声を含めた韻律の特徴の定式化を中心に研究を進め、以下の成果を達成した。1. 日本語の単語アクセントの知覚は、モーラごとの基本周波数の高低に深く関係するとの知見に基づき、2モーラ無意味単語の基本周波数パターンの傾斜、下降位置などを系統的に変化させた音声を合成して聴取実験を行い、2モーラ単位での高低パターンを特徴として用いることで、母語話者にどの程度正しくアクセント型が知覚されるかを数値として示す手法を開発した。また、非母語話者音声の基本周波数パターンを修正して合成することを行った。これをもとに、プロトタイプのアクセント型教育システムを構築して、その有効性を確認した。2.日本語の促音は時間長の制御と関係し、非母語話者には発音習得が難しい音素として知られている。促音が含まれると知覚されるか否かについて、種々の先行・後続音素の文脈で、発話速度を制御して合成した無意味単語音声を用いた聴取実験を行い、時間長の判断境界との関係を詳細に調べた。得られた結果から、促音の識別を行うシステムを構築し、一般的なHMMによるものを大きく超える性能を得た。3.生成過程モデルにより近似された基本周波数パターンでHMMを学習し音声合成を行う枠組みを構築した。合成された音声の品質が向上することに加え、生成される基本周波数パターンを生成過程モデルにより良好かつ容易に近似し得ることを確認した。上記1に適用し、非母語話者音声を修正して合成することを行った。4. 標準中国語音声について、母語話者、非母語話者音声の韻律の特徴比較を行い、そのリズムパターンに、一見、Stress-Timed言語のリズムが現れるが、これは学習者の不慣れから来る影響であって、詳細にみると母語音声の影響が現れることを示した。
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