研究課題/領域番号 |
24652118
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松原 緑 名古屋大学, 教養教育院, 准教授 (00547036)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 第二言語習得 / 産出 / 運用能力 / ワーキングメモリ / ストラテジー / カバー率 |
研究概要 |
本研究では第二言語学習者が目標言語で意思の疎通を図る際に、オンライン処理を必要とする口頭産出とオフライン処理の記述産出において生じる運用能力の差を検証し、口頭産出に有効なストラテジーについて提言することを目標としている。 平成24年度は既に実施したパイロット・スタディをもとに、リサーチ・デザインを再考した。「自由度」の異なる3種類のタスク(1)指定日本文の訳出、(2)6コマ漫画のストーリー説明、(3)自由意見の主張 を各2問ずつ、合計6問を確定し、これらの3種類のタスクをランダムに提示することで設問の種類によりバイアスがかからないよう提示方法に改良を加えた。実験参加者は20代の大学生30名を英語能力別に募り、2月末に実験を実施した。3種類のタスクの産出データの他に、リーディング・スパン・テストを実施しワーキング・メモリの容量を計測した。これらのデータ採集は防音ブース内にてPC画面にタスクを提示し、実験参加者1名に対し、実験補佐員が付くマンツーマン方式で行った。タスク実験終了後、取り組んだタスクについてのアンケート調査を実施した。 現在、収集した音声データの書き起こしに着手しており、終了し次第、口頭産出と記述産出の運用能力のギャップを分析する。データの分析には、従来多く用いられてきた「流暢さ」「正確さ」「複雑さ」の3指標では測り切れない部分に着目し、意図したことがどの程度表出されているのかを測る新たな指標として意味的正確さを測る「カバー率」を採り入れる。また実験参加者の英語能力に加え、ワーキング・メモリの容量も分析対象とする。 分析結果のまとめは平成25年度に行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度前半は3種類のタスク、タスクの提示方法および実験手順の確定をした。実験参加者の英語能力に加え、ワーキング・メモリの容量もデータ分析の際に考慮すべき項目としてリーディング・スパン・テストを実験に加えた。 後半に予定していた日本人英語学習者の産出データ収集実験は、当初予定していた既存のCALL教室での実施は機材の不調により一斉実施はリスクが高いと判断し、実験実施方法に変更を加えて、2月に実施した。英語能力別に日本人英語学習者計30名を募り3種類のタスクを各2題、合計6題の産出タスクに加え、ワーキング・メモリを測定するリーディング・スパン・テストおよび実験後のアンケート調査を実施した。現在収集した音声データの書き起こし作業を行っており、終了し次第データ分析に取り掛かる。
|
今後の研究の推進方策 |
収集した産出データとリーディング・スパン・テストおよびアンケート調査の結果を、以下に挙げる3つの観点から分析する。 1.ワーキング・メモリの容量が学習者の口頭産出と記述産出のギャップに与える影響 2.タスクの自由度が学習者の産出に及ぼす影響 3.学習者ストラテジーの違いが学習者の口頭産出と記述産出のギャップに及ぼす影響 順次、結果をまとめ平成25年度後半より成果報告をする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度後半に予定していた既存のCALL教室を利用した実験実施は機材の不都合により、数十人の実験参加者の音声データを一斉に収集することには問題が生じる可能性が予測されたため、より整った実験環境下で本実験を行うことに計画を変更した。具体的には防音録音ブース2基を使いマンツーマン方式で実験を実施した。 この実験実施方法の変更に伴い平成24年度の研究費使用計画を、次のように変更した。実験参加者の募集、実験施設の使用、実験実施の際の補佐、および収集データの記録を(株)アイアール・アルトに依頼し、実験を実施した。平成24年度の繰越額および平成25年度の人件費から一括して支払いをする。実験は問題なく完了したため、平成25年度前半に予定していた追加実験は行わない。平成25年度前半からデータ分析を始め、結果をまとめて、国内1回、海外1回の学会発表を行う予定である。
|